「ふぁぁ…もう、こんな暖かい季節かぁ。」

うとうととやってくる睡眠も、
暖かい温度も…。

春の訪れなんだなぁ。


「(…っていうことは、
 四天宝寺のみんなとはあとちょっとしか一緒にいられないんだ。)」


私はこの学校を今年で去るということは前々から知っていた。
――次行く学校は県外で、
きっと…きっと、もうみんなとはなかなか会えなくなる。


…なんて淋しがるなんて、
私…だめだめだなぁ。


「(みんなとまだ一緒にいたいっ。)」

本当に…私はわがままな先生だ。

時間はじりじりとやってきます



「――ぃ、花子先生どうしたんー?」

「……えっ」

気がつけば、
目の前には遠山のくりんくりんな瞳が。

…うあああぁぁあ?!

ビックリして思わずのけぞる。


「…花子先生今日元気ないやろ」

「忍足、何をいってるのかね。
 私はこの通り元気ピンピンじゃまいか。」

「――なんかあったん?花子先生。
 あんた分かりやすすぎやねん、無駄に。」


…そういって、
気がつけば全員が私の顔をじっと見ていた。


……あーぁ。

この子達に心配かけてるなんて…。
だけど、私は言わない。

寂しいだなんて、言ったらそれこそ彼らはなんとしてでも私が県外へ転勤することを防ごうとするだろう。

だから――言わない。




「……みんなは、」

「「「………」」」


「みんなは、春の訪れってなんだと思う?」

あ、何か私珍しく先生っぽい。
大人っぽい。


「……なんかまともなこというなあ。
 春言うたら桜やろ。」

「……うん、そういうこと。」


そういって私は手をパンパン叩くと「授業始めるよー!」といった。

白石とかは「っは?」「んなあほな!」みたいな反応をしていたが、
――まぁ、そこまで問い詰められても困るんだよね。


…後ちょっとでみんなとお別れ。

だけど、
私はこのことは最後までみんなに内緒にしておこうと思う。


離任式の日まで、内緒に――。







「(だから、それまで楽しまなきゃ。)」

みんなと思いで作りしていかなきゃ。





「はい、忍足!フラットの意味を答えよ!」

「はああぁぁ?!わからんっちゅーねん、フラットはフラットや」

「………っふ、まだまだね、忍足も。」


キミ達にまだいろいろ教えたいことはあるけれど、
先生はそろそろ旅立たなければいけません。




だけど…さ。

やっぱり、すごく寂しいんだ。





「(泣きたくなるなんて、私らしくない。)」








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