「はぁ…はぁっ、」

「お前意外に体力ないのぅ」

「うるせ!現役バリバリの中学生と体力一緒にすんなっつーの!」

――私と仁王が辿りついたのは屋上だった。
…あ、街の景色が見える。

凄い…。

持って帰ります



「のぅ、花子。思うんじゃ」

「………え?」

「――これも、何かの縁じゃないかのぅって」

そういうと仁王はフェンスにもたれかかって意地悪く笑ってみせた。



「……はぁ。」

「――お前さん、先生なんじゃろ?」

「え?えぇぇえぇぇえぇぇぇ、なんでそれを――」

「いや、遠山が普通にいっとったじゃろ。
 ……先生、かぁ。悪くはないのぅ」

「何が?」

「ん?こっちの話しじゃ。」

そういうと、
仁王はフェンスにもたれかかるのをやめてこっちへ歩み寄る。



クイッ。

「――四天宝寺へ渡すのは勿体ないのぅ…。」

仁王は私の顎をぐいっと上に引っ張るとじっと私の瞳を見つめる。
は…恥ずかしいっ。

現役中学生だって分かってるのに恥ずかしい。


「……こんな先生がほしかったんじゃ。」

「えちょ、この展開やめようよ。
 知ってるんだけど、こういう展開」

「――花子。どうじゃ、立海にこんか?」

って、またこの勧誘かよぉぉおおぉぉ!

跡部とかいうやつの時といい、
仁王といい――。

何故そんなに先生をほしがる!

意味がわかんない。





「嫌っていう時は、無理矢理にでも持って帰ろうかのぅ。
 のぅ、花子?」


「えちょ、にお――」

仁王は私の腕をつかんでいっこうに離そうとはしない。
えちょ、離せ…!離せ、この詐欺師が…!



「ちょ、やめ…誰かああぁぁあ!
 田中花子の処女喪失の危機だよぉぉおおお!

ガチャッ!


大丈夫か、花子!

白石、何でお前処女喪失って聞いたらでてくんだよ。
もっと早くに出てこいよ。

――言いたいことはたくさんあるけれど、
なんだか…白石と、その後ろにいる生徒たちの顔をみたらほっとした。


「……みんな、」

「――ックク。
 手にはいらんもんほど面白いものはない」

そういうと仁王の手がぱっと離れる。


「花子ちゃん!」

「金色ぃぃいいぃぃぃい!」

私が金色と感動の涙を流しながら抱き合うと、
一氏がべりっと私達を離し「小春に触んな!」と敵意をむき出しにしてきた。

…一氏、死ねばいいのに。



「……なんや、仁王君。
 偉い易々と渡してくれたなぁ。」

「――ん?
 まぁ…今回は譲ってやろうと思ってのぅ」

「…どういう風の吹き回しやねん。」

「――策をたてるんじゃ。
 そして…いつか、花子の迎えにいくぜよ」

そういうと仁王が「ぷり」といって笑った。




迎えに来ないで下さい。

「そうよそうよ、花子ちゃんの言うとおりよー!」

「…はぁ、これ以上厄介ごとやめてほしいんやけど。」

そういって財前がめんどくさそうに頭をかいた。
…まぁ、今回の件といい跡部の犬の件といい――。

どっちも私が巻き込んでるんだよなぁ。

そう思ったら、
罪悪感がわいてきた。



「……花子?どうしたん?」

「え?あ、ななななにも!」

遠山が心配そうに顔をうかがってきたので、
私は慌てて否定をした。



……生徒に心配されてどうすんだ。ほんとっ。




「……花子先生。
 あんま…変なこと考えんなや、」

そういって白石が頭をぽんぽんと叩いた。
……白石っ。


「まあ、電車寝過ごすとかはありえん思ったけどな。


「ごめんなさい。もう二度と寝過ごしません。」


そういって、
私が生徒達に必死に土下座している姿を見て仁王がくくっと喉をならした。



「(……花子かぁ。四天宝寺中が羨ましいのぅ。)」


そのほほえましい光景を見て、
自分の顔がゆるんでいることなんて気がつかずに。




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