「でさ、話しなんだけど――」

「このオレンジジュースむっちゃうまいで!」

話し聞けや、ゴルァッ。

気まずい雰囲気



「……っぷはー!うまかったわぁ!」

「……そっか、よかったね。」

「なあなあ、姉ちゃんのリンゴジュース飲みたい!」

そういって、遠山君がキラキラした瞳で上目遣いを使ってくる。
う…っ、これは計算してやってるの?

それとも素なの…?!

どっちにしろ、こんな顔されたら断れない!


「……どうぞ」

「わーい、おーきに!」

そういって、嬉しそうな顔をして私の飲んだリンゴジュースをぐびぐび飲む。
うーん…元気だなぁ、この子。


「んで、姉ちゃん話しってなに?」

「(あ、聞いてたのか。)話しってね…謙也のことなんだけどさ、」

そういって私は一応辺りをキョロキョロと見渡してみる。
謙也…いないよね?

今私達は中庭の木の下で涼みながらいるんだけど、
こんなところ…謙也に見られたら「花子が浮気した!」なんていって
泣いちゃいそうだし。


「…んぉー?謙也って、
 あの金髪の足速い人やったっけ?」

「そそー。自称浪速のスピードスター君。」

「あぁー、どないしたん?」

「……えっとね、」

あー…言おうと思えば思うほど、
心がギシギシと痛む。

…こんな思いをさせる謙也なんてどぶすにはまって抜けられなくなればいいんだ。


「……私謙也の彼女なんだけどさ。
 謙也…いつまでたってもキスしてくれないんだけど、
 これって愛されてないのかな」

「………?キス?」

あかん。
これは謙也以上に純粋だった…!
キスさえも分からなかったか…!


「あー…キスわかんないならいいや。
 まあ、遠山君。謙也と仲良くしたまえ」

そういって、私が立ち上がろうとした瞬間だった――。



ガシッ。


「姉ちゃん、何で泣いとるん?」

そういって、遠山君が不思議そうに首をかしげている。

あ…っれ?
私泣いてる…?


「………っ、いや…ううん、その――」

「姉ちゃん、ワイの胸で泣きぃや!
 泣きたいときはいっぱい泣けばええねんで!」

そういって、遠山君は私をひっぱると自分の胸におしつけた。

……あぁー、こんな年下の子にまで気使わせて私ってば…。


「……ごめん、ありがと…っ」

そういうと、
私は遠山君の胸でわんわん泣いた。

…謙也の馬鹿!鈍感!
私のこと…本当は好きじゃないんじゃ、なんて考えたりしちゃうじゃん。

こんなに…こんなに不安で仕方ない。





「……姉ちゃんは本当好きねんな」

そういって、遠山君が優しく笑った。.

..

...


「(あー…あれ?花子と金ちゃんやん。
 意味わからん組み合わせねんけど。)」

教室から見えたのは、
金ちゃんと花子だった。
――こんなところ、謙也に見られたらあいつ…凄い落ち込むやろーなぁ。


「(あー、でもあの組み合わせどうやって起きてんろ?
 花子が浮気とか?はは、それはありえんかぁ)」

「白石、何みとるん?」

「――っ、うわ?!謙也?!」

隣で声をかけてきたと思ったら、謙也だった。
――あかん、あの2人を見せるわけにはいかん!


ガシャッ!


「……何でカーテン閉めたん、白石。」

「え?えーっと…カーテン閉めたくなってん。

意味わからんで。暑いねんから、カーテン開けてーや、風こんやん!」

そういって、謙也がカーテンを開けてしまった――。

ガシャッ。



「………あ、れ。花子と…金太郎…?」
そういって、目を丸くする謙也。



「…なんで、花子が金太郎と――」

動揺した謙也に追い討ちをかけるように、
金ちゃんが花子の腕をつかんでぐっと自分の胸に引き寄せた。


あーぁ。やってもうたか…。



「謙也…?」

そう問いかけてみるが、
謙也はパチクリと目をあけたままでいる。

あー…謙也にはショッキングすぎる光景やったか。


「白石……俺、どないすればええん」

「……は?」

「花子が…浮気や、浮気したんや…!
 俺が…キスせん言うたから――…!」


「はぁ?!」


そういって、半泣きになる謙也。
ちょ…何がどうなっとるんや、これ。



「俺…花子のところ、行ってくる!」

「あ、ちょ――」


謙也は止める間もなく走り去っていった。
…なんやねん、あいつ。


「…もしかして、
 妊娠するってやつ…マジにしとったんかな。」

いや、んなわけないよな。
あはは。




- 6 -


10
[*←] | [→#]


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -