「さ…さっきはほんますまんな。白石が…。」

「いや、いいよ。白石だもん」

アイツがあぁなのは今に知ったことではないんだけどさ。

一定の距離



一日が終わり、
私は謙也の部活が終わるまで教室で待機して、
終わりの時間になるといつも教室をでて謙也と玄関で鉢合わせる。

…待っている時間でも、
こんなに幸せだなって思えるんだもん。

不思議だよね、恋って。


「――なぁ、花子は…やっぱ、チューって、
 したいと思う?」

「………え?」「や…いや!簡単に考えてくれてかまわんで、簡単に!」

ちょ…チューを簡単にすまそうって考えているお前がなんなんだよ謙也。


「……私は、したいって…思うよ」

「………」

「でも…謙也の気持ちが落ち着いてない以上、
 今はまだいい」

そういってから、
私は謙也の指に自分の指を絡めた。

「…あ、花子――」

「謙也は謙也のままでいいよ。
 ――私はいつでも待ってるから。」

そういってニッコリ微笑むと、
謙也も嬉しそうにはにかんだ。

…こういう一定の距離を保つのも、それはそれでいいのかもしれない。


「(けどやっぱり…5ヶ月たったんだから、
 チューぐらいしてほしいなあ…。)」

なんて思ってしまう自分はわがままなのかもしれない。

.

..

...




「で、それで?

「え?話し終わりやけど?」

そういって、目をパチクリさせる謙也。

「って、のろけ話しやんけぇぇぇえぇぇえ!
 えぇ加減にせぇよ、お前ら…!特に謙也!」

「な、何で俺なん?!」

「花子が待っとる発言してくれたのは、
 気ぃ使ぅてくれたぐらいは分かるやろ?」

「……お、おん」

「――せやけど、いつまで待たせる気や?
 5ヶ月も待たせとんねんで、5ヶ月!

 花子もええ男探しにハローワークでも行ってまうわ!」

白石……。
ハローワークは仕事探すとこやで…。


「で…でも、チューっていってもなぁ…!」

「えぇか、謙也。
 たかがチュー、されどチューや。

何故か言葉に重みを感じてしまう。
…あかん。

白石と一緒におると、頭痛なってきた。


「あー…もうええわ。
 キスの話しはやめよーや」

「……でもな、謙也。
 一つだけ…忠告してもええか?」

そういって、白石が珍しく本気な顔をしていった。



「キスしたら妊娠するんやで。」


「っは?嘘やああぁぁあああ!
一気に顔が真っ赤にほてる。
え?嘘、チューひとつで赤ちゃんできるん?!


いや…それやったら、
ラブコメのマンガなんてチューの荒らしやん!

ネギ●!なんてどないすんねん?!

主人公と女の子達があんなにチューしまくって…誰の子か分からへんなるやんけ!


「えぇか、謙也。
 ――チューして、2年たってゆっくり月日をたてて赤ちゃんはできるんや」

「に…2年も?!」

ガラッ。


「ただいま――…って、何の話し?」

そういって、不審そうに俺たちを見比べている花子。


「や…何でもないで、なー謙也。」

「お…おん。」

「………?まぁ、いいけどさ」


なんか納得いってないっちゅー顔しとるけど――。
…赤ちゃんの話しをするのは、なんか恥ずかしい。

っていうか…キスひとつで赤ちゃんって出来るんやなぁ。


人って恐いなぁ。

じゃあ、男はなんでキスしても赤ちゃんできんねんろ?
あれ?不思議やな?



「(ぶぷ…謙也騙されとる、ダラやな。)」

「(…?何で男は赤ちゃんできへんの?)」








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