「……あ、あんな、花子――」

「う…うん……っ」

「………勘違いして、ほんまごめんな」

そういって、
謙也はまるでしかられた犬のようにしゅんっとしていた。

――謙也、それは卑怯だよ。

キスまで1cm


私は普通に道端だということも忘れ、
謙也をぎゅっと抱きしめた。

「………花子?」

「……謙也、今の…可愛すぎ……っ」

「え…?え、え?」

なんでお前はそんなへたれなんだよ!
馬鹿!家にテイクアウトしたい!


「……私、謙也にキスできない言われたとき
 凄い…凄い傷ついたから」

「………おんっ。」

「もうこの世に生きていけないくらいの絶望だったから」

「………花子」

そういうと、謙也が私の背中に腕を回して強く抱きしめてきた。




ギュウゥゥッ。

花子、好きやで!

「いだだだだだだだだだっ!」

「あ!すまんかった!」

謙也はあまりにも力をいれすぎて、
私の体をボキボキさせた。

――痛い!痛かった!

あ、涙でてきた…。



「ほ…ほんますまんかった!」

「……いや、いいよ。
 それほど謙也が私のこと…好きなら、さ」

これぐらい、幸せすぎる痛みだもん。



「……花子。
 なあ…チュー、しても……ええかな」


「……それ、聞いちゃいます?」

「え!ダメなん?!」

――まあ、謙也が不意打ちてきなキスをしてくるなんて想像ができないし、
今は…こんな可愛らしいキスでも、いいのかもしれない。



「……いいよ。チューしても」

そういうと、
謙也は覚悟を決めたかのように深呼吸をする。

えぇ…そんなこと目の前でされると、
こっちまで緊張してくるよ…。


「……いくで、花子」

「う、うん!」

そういって、謙也は私の肩に手を置いて
ゆっくりと顔を近づけてきた――。






キスまで1cm。












チャリンチャリーンッ。

はい、男女の不純異性交遊禁止〜

「白石ー、不純異性ほにゃららってなにぃ?」

「金ちゃんにはまだ早いことやー」

そういって、
白石が後ろに遠山君をのせながらチャリで私達の間につっこんできた。


お ま え な ! 


「ななななな、白石ぃ?!って、お前らまで――!」

「……花子ちゃん、ごめんな。
 止めたんやけど、蔵リンはどうしても行く言い張って――」

「まあ、こんな人がおるところでチューしようとするほうが悪いんや!」

そういって、けらけらとユウジが笑っている。
……男子テニス部、集合ってやつですか。


「あー、謙也さんダサッ。
 俺なら不意打ちでチューしたるんに。」

「財前、お前はませすぎやねん!」

「そういう謙也さんは一生童貞っすわ。」

「んな――?!」

謙也は顔をカァァッと赤くさせてわなわなと震えている。


「なぁなぁ、白石ぃ!
 童貞って、なぁに?」

「金ちゃんには関係のないことやで」

「ふーん」


白石滅しろ。
心の底から本気でそう思った。


その日、
私は謙也とは後1cmというところでキスできなかった。

…白石っていう邪魔のせいだ!

だなんて思ったけど、
こういうのも…悪くないのかもしれない。




〜〜〜♪

あ、メールだ。
誰だろ?

そう思って携帯を開くと、謙也からだった。





送信者:謙也
件名:NO TITLE
―――――――――
今日は邪魔入ったけど、
次は成功したるから!

……せやから、
チュー。
しような?
―――――――――


私は携帯を見て、
思わずにやついてしまった。


なんだこの可愛い文章!
なんだその宣戦布告!

…もう、私には謙也以外はありえないんだろうなぁ。


ピッピッ。




『次は邪魔入らないところで、チューしようね』




不器用な私と彼の、恋物語。



Fin.



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