「く…蔵?!大丈夫――?!」

「ん…大丈夫。
 植木鉢に間一髪でよけれたから、な」

そういって、土にまみれた蔵が笑った。

落ちた植木鉢


上を見上げたが、
植木鉢を落としたような人影はもういなかった。

――私の学校では、
植木鉢は窓には飾っていない。

そう考えれば――窓から植木鉢が落ちてきたことは不自然なことである。

…誰かの意図以外には、
考えられない。

「……誰が、こんなことを…っ」

思い当たる節はたくさんある。
そりゃあ、テニス部のマネージャーだよ?
イケメンだよ?

嫉妬する女子はたくさんだし、
呼び出しだってたくさんされるし――。

けど、影から危害を与えようとするパターンは初めてかもしれない。


「(…もし、蔵がいなかったら)」

植木鉢が頭に直撃していたかもしれない。
――そう考えれば、ぞっとした。


「……花子、大丈夫か?」

「あ…私、は大丈夫。
 あの…ありがとう、」

「ええよ。
 ――それより、花子が怪我せんでよかったわ」

そういって微笑む蔵。
…あ、やばい。

何だかほっとしたら涙腺が緩んできた。


「……………っ、」

「…アホ。何泣いとんねん。」

「な、泣いてないし。
 これは光合成で作り上げたんだよ

めっちゃ意味わからへんねんけど。

そういいながらも、
蔵は大きな手で私の頭をがしがしと撫でてきた。

――よかった。

蔵が怪我しなくて…よかった。
蔵がいてくれて…よかった。


「…あー、もう、俺が泣かしたみたいやんか」

そういって、
プレイボーイな蔵が珍しく困惑している。

わーい、そのまま困惑してハゲろ。


「…なぁ、花子」

「…………ん?」

「――なぁ、これは忠告やない。命令や。」

そういうと、
蔵が真顔で私の顔をじっと見て言った。


「俺から…一歩も離れたらあかん。
 家まで俺が送ったるし、
 朝だって迎えにいくわ。」

「……っ、ちょ!
 ままま待って――!

 いくら植木鉢が落ちてきたからって、そこまで過保護にならなくっても――!」

「…植木鉢が落ちてきた。
 ほんまに、それだけのことやと思う?」

………蔵は、
一体何を言いたいの?

私に、何を伝えたいの?

――分からない。
蔵が、どうしてそこまで過保護になるかも。

そこまで…私と一緒にいてくれようとするのかも。


「それと――ユウジには近づかんほうがええ。」

「な…っ!それはやだ――「花子。」

蔵の低い声に、
思わずびくっとなってしまう。

…何で、ユウジに近づいたらダメなの?

女嫌い克服するために一緒にいたらダメなの?

何で?どうして?



「……どうして、私には何一つ言ってくれないの?」

「…………聞いたところで、
 傷つくのは――お前やん。」

そういって、
蔵が悲しそうに微笑んだ。





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