「みーんみんみんみーん。」

「謙也さん、あれどないします?」

「ほっとけほっとけ。そのうち飽きて降りてくんで」

そういって、
(心は)蝉になっている私を置いていく2人。

私は蝉になる



「って、つっこめやお前らぁぁぁあぁぁあ!

「あ、降りてきましたわ。」

「あ、ほんまや。蝉が降りてきた。」

なんか…うん。
部活の時間がきたのはいいが、
蔵が来るんじゃないかって思うと緊張してついつい蝉になってしまいたくなる。

あぁ…蝉。あなたの羽を私にプリーズ!


「花子さんほんまやめてください。
 恥ずかしすぎっすわ。」

「今の…全部、口から漏れてたで。」

そういって、謙也がぷぷぷと笑っていた。
このやろー…!


…でも、緊張して蝉になっていたわりには
蔵が部活にこなくて拍子抜け中。

……んんん?

っていうか、益子との問題が解決した今――。

ユウジも部活にこない理由はなんなんだろ?


「ねぇ、謙也。
 蔵は?」

「白石?知らへんで。
 あいつのことやしそこらへんで女の子につかまっとるんちゃうんか」

「いや…まあ、ありえそうだけどさ。」

「……部長なら、そういえば…」

「え?!財前知ってるの?!」

そういうと、コクリと頷いて考える仕草を見せる財前。



「……ユウジさんとどっか行くのみましたわ。そーいえば。」

「えぇ?!あの2人が…?!」

あれ、今険悪ムードの2人じゃん…!
今度は何が起こるか――。


「いってきま「どこへいくって?」いえ、どこにもいきません」


気がつけば――。
蔵が満面の笑みを浮かべて私の首根っこを掴んでいた。

ぐえっ。苦しい。
もうちょっと優しくしてくれ。


「……よろしい。
 それより、部活するで部活ー!謙也もちんたらしとるとイグアナの消しゴム蹴り飛ばすで!」

「っわぁぁぁああぁ!それだけは堪忍っちゅー話しや!」

そういって、ダッシュでコートへ駆けていく謙也。
……おぉ、なんなんだあの足の速さは。

浪速のスピードスター、恐るべし。



「………部長、と…ユウジさん」

「え――?」

『ユウジ』という単語にびっくりして、
思わず目をこらして固まってしまった。


「……帰ってくるの、遅いっすわ。
 小春さんの相手はあんたしか無理っすよ」

「――…財前、」

「なまってる体さっさとほぐして、
 シングルス…俺とも、やってもらわないとこまるんすよね。こっちが」

そういって、
毒を吐くだけ吐くと財前は満足したのがコートへ戻っていく。

……財前。

可愛くないけど、
その言葉の裏には彼なりの愛情がこめられているんだ…と思った。


シーンと静まった部室には、
取り残された私とユウジと蔵がいる。




「……俺も、お邪魔するわ。ゆっくりしぃや」

そういって、蔵が右手をヒラヒラとさせながらでていった。
――まるで、さっきまでのキスをなかったかのように。




- 27 -


32
[*←] | [→#]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -