――最初はただの凡人やって思った。
可愛いといっちゃかわええんかもしれんけど。

――猿っぽいしなぁ。
女の子なら多少は女らしさもないとあかんやろ。

…そんなことを思っていた時期が、俺にもあった。

恋しくて(白石視点)



――花子から逃げるように、
屋上まで来てしまった。

……って、キスして逃げてどないすんねん!

せやけど…怖くてまともに顔を見ることなんてできなかった。
あれ。

怖いって…俺が、
花子のことを怖がってるん?


「……こんな気持ち、初めてや…」

こんなに誰かを愛したり
恋しいと思う気持ちは初めてだ。


「……キス、してもうた。」

我慢していたはずだったのに、
気がつけば――手が出ていた。

……ダメやな、俺。

…せやけど、花子も悪いんやで。

ユウジの話しのとき、
あんな嬉しそうな顔して…。

そのわりには、俺にシロツメクサで作ったリング渡してきて――…。


「……ユウジなんて、嫌いや。
 ――花子の気持ちも自分の気持ちにも誤魔化しとる。」


――ほんまは分かるねん。

2人が…なんとなく、ええ雰囲気やなーってことも。
好きあっとるっていうことも。

……ほんまは、知っとんねん。




「……やっぱ、ユウジには話しつけなあかんな。」

俺はそう考えると、
すっと立ち上がる。

……あんなやつ、部活やめてまえって思ったけど
こんな…こんな終わり方したら、
後味悪すぎで死んでも死に切れんわ。



「……花子。
 自分だけが…叶わん恋しとる、なんて思っとんなや。あほたれ…」


ここにだって、立海にだっておれんで。

――叶わない恋しとるやつは。



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