――退部なんて、私一言も聞いてないっつーの。

「……馬鹿、ばかユウジ…っ」

ピタリと足を止めた。
――私の前には、壁のように…葛城益子が立っていた。

和解


ドクンッ。
仮にも、私を殺そうとした人物が今目の前に立っている。

――それだけで、体が震えそうで。

「……あら、おはようございます。田中さん」

「――!」

「体調は…すこぶるよろしく見えますのね」

そういって、にこっと笑った。
…葛城さんをなんとかしなければ、ユウジの問題はどうにもならないだろう。

――いずれ、直面しなければならないことなのだ。

それならば…私は、

「……話しが、あるの」

「あら?…奇遇ですのね。
 私のほうからもお話がありますの」

私は今にも倒れてしまいそうな足を何とか力をふりしぼって立たせた。


.

..

...


「………あんたさ。
 死ななかったの、残念よね」

そういって、葛城さんは顔を歪めた。
――私達は今屋上で話している。

…念のため、
千歳君とかが寝ていないかあちこち確認したが――誰かがいる気配がないようだったので、面と向かって会話をすることができる。

「……死んでほしかった?」

「えぇ、もちろん。」

「………そっか、」

誰かに『死んでほしい』なんて
冗談以外で言われたことがないから――物凄く、胸が苦しくなった。


「……葛城さん。
 もう…もう、終わりにしよう」

「ボス猿風情が何を言ってるのかしら…!」

そういうと――。
葛城さんは、ポケットからスタンガンを取り出した。

…どうやって入手したんだろうか、そのスタンガン。


「……あなたがいくらユウジを愛していても、
 ユウジがあなたを愛することはない」

「……っ」

「そして何より――。
 あなたはユウジじゃなくて…自分を愛していた。

 1人が怖かった。違う?」

「違う――!」

そういって、スタンガン片手に私に突進してくる葛城さん。

私はそれをひょいっと避けると、
スタンガンを持っている腕を思い切りはじいた。


パシィンッ――!

「っつ……!」

「……真っ向勝負なら、私強いよ。
 いくら強い凶器を使ってきても、
 絶対負けない自信はある。」

「――っざけんな!」

そういって、
今度は違うポケットからナイフを取り出すと私に刺しかかろうとする葛城さん。

それを右にすっとかわすと、そのまま葛城さんのお腹に思い切り拳をたたきこんだ。


「――っは…!」

「……そんな凶器ばっか振り回して、
 危ないだろーが馬鹿!」

私はそう叫ぶと、
葛城さんをぎゅっと抱きしめた。

――葛城さんは、友達がほしかっただけ。
ユウジが初めて自分と話してくれたことが嬉しかったに、間違いない。

けれどその恋心はいつか、おかしな方向に向いていっちゃったんだね。


「……離せ「友達に、なろうよ」…………っ」

そういうと、
葛城さんの目が大きく開かれた。


「……何、言って…」

「私達、友達になれるよ。
 それに――私も女子の敵されて、友達…いないから。」

そういってへらっと笑ってみせる。
…あ、自分で言って自分で傷ついた。今。


「……私、あなたを殺そうと……し、た」

「………うん。」

「なのに……何で………?」

そういって、
葛城さんは――声をだして私の胸で泣き始めた。

…私はただ、ずっと黙って葛城さんを見守っていたのだった。



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