――目を覚ましてから私はしばらくの間入院することになった。
…あまり体調もよくなく、
崩し気味だったが何とか無事回復した。

それまで、蔵やそのほかの部員達が私の顔を覗きにきてくれた。

――それだけじゃない。
立海の部員からも応援メールが届いていた。

…お母さんがブン太に言っちゃったんだろうなぁ。
そこから立海に広まったに間違いない。

戻った日常


「っで、何ですか。
 何故あなたがそこにいらっしゃるんでしょうか。

「――アホ。迎えにきたんやから、素直に送られとき」

そういって、
朝っぱらから玄関をあければ眠たそうな目をした蔵が立っていた。

……いつから玄関に立ってたんだろ。

っていうか、
何の報告もなしに迎えに来てくれたのか。


「……ありがとね、蔵」

「……どういたしまして」

「あのさ――」

…こんなこと聞いたら、
自意識過剰に見られるかもしれないけど――。


「……ユウジ、は…どうかしたの?」

「……何でや?」

「え…だって、お見舞いもメールも…何もないから…。」

唯一私に何の言葉もかけてこなかったのが、
ユウジだけだった――。

いくら葛城さんの相手が大変だとはいえ、
何も声をかけてこないって…おかしくない?

いや…あんまり、気にしないほうがいいのか。


「いや…まあ、ううん。いい。
 気にしないで」

「――はいはい、ほな行くで!花子!」

そういって――。
蔵が私の腕を掴んで走り出した。

…朝っぱらから走らせるか、普通!

っていうか、
まだ退院したての女の子なのにぃぃ…!


「花子、遅いで!体力もっとつけや」

「アホか!――あんたらの体力が異常なんじゃい!」

男と女の体力を一緒にするな、ドアホ!
――そんなことを思いながら、
私達は仲良く学校を登校した。

――葛城さんに会ったら、
どんな顔をすればいいんだろうか。

いや…っていうか、普通そんなこと気にするのは向こうだよね。


うーん。まあ…普通にしてればいいんだ、普通に。



.

..

...



「オサムちゃん…これ、」

そういって、俺は――オサムちゃんに退部届けを手渡した。

「……本当に辞める気なんか。」

「おん。…俺にはむいとらんでん。」

そんな嘘の皮肉な言葉を言ってみた。
――テニスがむいとるむいてないなんて、誰にでもあること。

せやけど…それを乗り越えて、
どこまでテニスを好きになるか。

それが、大切なことやって…俺は確かに知っとったんに。


「ふーん、そっか。
 じゃあ帰宅部になるわけか」

「まあ…そんなところやな」

「――それでええん?」

そういって――。
オサムちゃんが煙草をふかした。

うわ、けむっ。
やめろや、このおっさん。

一体いつになったら職員室で煙草すうのやめてくれれん。


「…俺は、後悔なんてしてへん。
 オサムちゃん…受け取ってくれや」

「……っはぁ。
 それがお前の決意ならしゃーないわな。

 うけとったるけど、後悔はするなや。……一氏。」

そういって、オサムちゃんは引き出しに俺の退部届けをしまいこんだ。
これで…これで、いいんや。


これで――。


ガラッ。

「オサムちゃーん、予算についての相談だけど…って、あれ。
 ユウジ……?」

そういって声をかけてきたのは――。
紛れも無く、花子やった。


「――…っ!」

「何…してんの?オサムちゃんと。」

「……………、」

何も言葉を返すことができない。
その光景を見て――花子は不思議そうに俺の顔を見つめていた。

あかん。

はよ…はよ、職員室でよ。
花子をもう巻き込まんって決めたんやから。



「ほな…失礼しますわ」

そういって、そそくさと職員室からでた。

――扉を閉めるとき、
少し傷ついたような表情をした花子の顔が見えたような気が…した。




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