〜〜♪

ふと、手元にあった携帯が鳴り響いた。
…花子かな。

そんなことを思いながら電話にでる。


『…おい、白石!大変だぞぃ!』

「ん?あぁー…その声は丸井君かいや。なんねん」

『花子が――!』

仲間割れ


「……俺が…俺が、悪いんや」

そういって、顔を真っ青にするユウジ。

「俺が…俺が、花子に全て言うてもうたから…!
 せやからこんなことになったんや……っ」

俺はその言葉を聞いた瞬間、
握りこぶしをつくってユウジの顔面を思い切り殴りつけた。

――ドゴッ!

どんっと後ろの壁に吹き飛ばされたユウジを、
小春が慌てて抱きしめる。

…その一方で、謙也が俺の腕を掴んでそれ以上何もしないようにと
行動を止めてきた。


「……謙也」

「――白石。あかん。
 ここは病室やで。」

「…せやかて、謙也。
 お前は…お前はユウジを許せるんか。」

自分の素直な気持ちを、謙也にぶつける。

――あれほど、
花子を巻き込むないうたよな。

花子が関連しないようにって、
話題そらしてきたんユウジは知っとるんよな。

…なんに、
全てを暴露した?

っは?

んなダラな話しがあるかいや。
冗談は休み休みに言えや。


「……蔵リン。
 確かに…ユウ君に責任はある。」

「………」

「せやけど、ユウ君やって辛かったんやで。
 ――1人で、ずっと…。」

そういって、ユウジの頬にハンカチをあてる小春。

……なんやねん。
なんで…俺が悪者みたいになっとんねん。


「せやかてな!
 このまま花子が目覚めんだらどないすんねん!」

「………蔵、リン」

「――死んでたら、どないしててん!」

そういうが、
ユウジは下にうつむいたまま――俺と目を合わせようとはしなかった。

…花子。
こんなやつのどこがええねん。

こんな…こんなホモ男で、
女みたいに家庭裁縫ができる男のどこがええねん。

…俺じゃ、ダメなんか。



「……責任とって退部しぃや」

「……!ちょ、白石!
 何言うとるばいね!
 確かに一氏はあれだったかもしれんかったが、
 それぐらい人なら誰でも「千歳。黙っとき。」

そういうと、
千歳は口をつぐんだ。


「……自分のしたことの責任くらい、
 とれるやろ。ユウジ。」

「…………、おん」

「わかっとるんやったら、
 今すぐこの病室からでてき。

 もう――花子に関わったりしたらあかん。」

ユウジを責めたらあかん。
――わかっとる。

せやけど、責められずにはいられなかった。

「………」

「――ユウ君!」

ユウジは荷物をまとめて、
今にも病室から出て行きそうな雰囲気だった。


そんな時、金ちゃんが――病室の扉を塞ぐようにして、ユウジの前に立ちはだかった。


「………金ちゃん。どき」

「………嫌や、」

「金ちゃん――。」

そういって困るユウジをよそに、
金ちゃんは頑なにそこをどこうとはしない。


「…金太郎はん。」

銀さんも珍しく目を細めて金太郎を見据えていた。


「……嫌や。
 どうして、みんなバラバラになる必要があんねん。」

「…………」

「ユウジがやめる必要がどこにあんねん!
 何で花子が目覚めんねん!

 ワイにはわからへんわ!

 誰か、教えてーや…納得できるまで、ここをどくことなんてできへん……っ」

そういうと…。
金ちゃんは、涙をボロボロと地面にこぼした。


…純粋やな、金ちゃん。

せやけど――。


「……金ちゃん、どいてやり。」

――俺は鬼やな、本当。
どんだけ性格悪いねん。

そんなことを思いながらも、嫌がる金ちゃんの手をひいて扉の前からどかせた。

「い…いーやーや!白石、ワイはこれだけは譲らんからな…!」

「……金ちゃん。大人しくしぃや」

「何で…?何でねん!
 最近のみんな、おかしいわ…!

 みんなのモットーな"お笑いテニス"はどこへ行ってん…っ!」

「……金ちゃん、」

「白石の馬鹿!頭冷やせ、ハゲ!」

そういうと――。
金ちゃんはラケットを片手にどこかへ走り去っていってしまった。

……金ちゃんは、
みんながバラバラなことが…嫌やってんな。ずっと。


「……俺も、いくわ。」

そういって、金ちゃんに続いて病室をでていくユウジの後を追いかけるように
小春までもが出て行った。


シーンとなった病室。

…何も知らないかのように、
花子の寝息だけが響いていた。







「……部長、
 このままで本当にええんすか。」

そういって――財前が、俺のことをじっと見ていた。
 


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