「なぁ…お前、名前はなんていうん?」

「か…葛城、益子…」

「……ん。俺は一氏ユウジ言うねん。
 よろしくな」

そういって、手を差し出すと――。
少女は怯えたような瞳をしながら、俺の手を…ゆっくりと、握った。

過去2


それから俺は、葛城とどんどん仲がよくなっていった。

――確かに葛城は暗いように見えるかもしれんけど、
中身はめっちゃいいやつなんに。

いじめるやつの気持ちが分からんわ。

そんなことを思いながら、
俺は葛城に言った。


「……その前髪切ればええやん」

「え?」

「前髪。目、隠れとるやろ?
 それがダメなんちゃうん?」

そういうと、酷くズーンと落ち込んだ葛城。
あ…しもた。
傷ついてもうとる…!

「い…嫌、だめなわけやないんやで。
 せやから落ちこま「う、ううん!私髪の毛切ろうかしら!」

そういう葛城。

あー…なんかかわええなぁ。
ええなぁ、葛城。


「……なぁ、葛城。」

「……?」

「俺と…付き合わん?」

そういうと、葛城が顔を真っ赤にした。
めっちゃ可愛い。

抱きしめたい。

――とか思う前に、抱きしめていた。


「……返事、きかせてや」

「……つ、付き合いたい…」


そんな彼女のか弱いところも、
全て…全て、俺は受け止められると思った。

ここまでは…よかったんや。

普通の恋愛して、
青春して――。

…なんも、おかしなところはなかった。


いつからおかしなってんろ。

――葛城。





昔のお前の面影は、もうどこにもおらん。

狂ったようなお前を見てると、
俺は胸が痛くなる。




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