「うぉおおおおお!私のたこ焼きがー!」

「えっへへ!花子が食べへんから
 ワイが食べたんやで!」

そういって、金ちゃんが屈託のない笑顔で笑った。

――ちきしょう。
怒りたくても、そんな笑顔向けられたら怒れないよ。

届かない


「――今日もユウジ来ぃへんなぁ」

そういって、謙也がぼーっとしながら言った。
――ユウジとあの女の子が付き合ったのを聞いて、
もう一週間くらいはたっただろうか。

…ユウジはあれから部活にこない。

小春も妙に元気がないし、
蔵は蔵で何か思いつめたような顔してるし――…こんな状況で部活を始めることさえできず。

仕方ないから、
金ちゃんと一緒にたこ焼き屋まで行ってみんなのぶんのたこ焼きを買ってきたはいいが。


「…所詮、部活より女をとるようなやつやった、
 っていうことやったんちゃいますか。」

「――ざ、財前!
 お前今のは言ったらあかんって!」

そういって、謙也が慌てたような表情で財前の口を手で塞いだ。
そして、チラリと小春のほうを見る。

――…放心状態の小春。

「こ…小春?大丈夫?」

「………花子ちゃん。
 花子ちゃんは、どうおもう?」

そういって、小春が私の顔を見た――。
…どう思う、って、
きっとユウジのことを言ってるんだよね。


「………幸せなら、いいんじゃないかな。」

「………あれが、幸せって…言えるんかいや…」

ボソリとそう呟く小春。
――どういうことだ?

「こは「ユウ君は、無茶しとる」

「え……?」

「ユウ君は、花子ちゃんのことを思って「小春!」

そう叫んだ蔵により、
小春は我にかえったような表情をして口をつぐんだ。


「……やめや。
 花子が困っとるやろ」

「……せやけど、蔵リン!
 このままで、ほんまにええの…?」

「…………。」

「正々堂々と勝負するのが、
 戦いってもんやろ!?」

「………小春。
 ユウジと花子、
 危険な目にあわせたらあかんほうは…一目瞭然やろ?」

そういうと――小春は視線を下にむけた。
…頭がごちゃごちゃとしてくる。

今の会話は、
2人が何かを知っているからこそできる会話なのだ。

――何もしらない私には、
今の会話が全く読み取れない。

……でも、一つだけ分かったこと。



『ユウジが無茶をしている』?

どうして?何故?
何のために?


ズキンッ。


………ユウジ。

胸が痛い。

好きで好きで、しょーがなく好きで。

今あなたに手を伸ばしても届かないんだろうな。

…ねぇ、ユウジ。

私のこと好きにならなくてもいいから
それでもいいから

――テニス部に、戻ってきて。


私は唇をきゅっと噛み締めると、
部室を出た。


「花子!」

後ろからする蔵の声に、見向きもせず。






- 9 -


32
[*←] | [→#]


「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -