「おっはよー、花子。
 今日からお迎えはこの白石様が――バタンッ。




「って、何さらしてくれとんじゃぁボケナスがぁぁああぁぁ!

朝から変なものを見てしまって、
玄関の扉を閉めた瞬間――。

見事、玄関の扉を飛び蹴りでぶちあけてきた蔵。
おま…ちょ、
何してんだよ!扉蹴っていいもんじゃないだろ!


「ちょ、扉壊れたらどうすんのさ!」

「ん?そりゃあ、花子が悪いで。

自信満々によくそういうこと言えるよね。

どこからその自信が生まれてくるんだろうね。
こいつの頭、一回分析してやりたいくらいだわ。

――…そんなこんなで、
昨日は泣き続ける私を支えてくれていた蔵。

…はぁ。

あんなかっこわるいところ見せて、人生終わった気分。


「なぁ、花子」

「ん?」

「……やっぱなんもない」

「え?フェイント?フェイントかけたの?」

よく分からないが、
蔵にフェイントをかけられたみたい。

うーん…どうしたんだろう、蔵。


「(…俺は、本当は
 ユウジと花子が離れ離れになることを望んでたのかもしれん。

 そしたら――俺、超悪者やな)」

肩をすとんと落とす。

「?」



どうしたんだろ、蔵?
何かこう――…悩んでる姿を見てると、
不思議と見とれてしまう。

…って、何いってるんだ自分!ドアホ!



「蔵ー、ぼーっとしてたら置いてくからねー」

「って、ちょ待ちぃや!」

そんなこんなで朝からドタバタしながら登校。
――ダッシュダッシュダッシュ!

Bダッシュだあぁあぁあぁぁぁ!


「うぉぉおおおおお!
 のぉすぴーど、のぉらいふううううぅぅううう!

そういって、
後ろから物凄いスピードを出してきた謙也に見事に抜かれました。

はぇぇ…。

あいつマジでなにもんなんだよ。
陸上部入ればよかったのに。

って思ったのは自分だけじゃないはず。


「――……ぁっ」

「…………、」

ユウジが目の前にいて、
目があって――。

けど、その瞬間に目をそらされた。


「(どうして…)」

「ユウジ。いきましょ!」

そういって、可愛らしい女の子がユウジと腕を組んで登校する。
…ぐしゃぐしゃになりそうな感情。

あ、私今あの女の子殴りたい。

少なくともそう思ってしまった自分の汚い心に、
心から軽蔑してしまう。

…ダメだ。

好きな人の幸せを、願わなくちゃ。


「――花子。行くで」

そういって、私のそでをひっぱる蔵の顔が、
やけに真剣で――。

…私は何も言えずにいた。



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