「――たとえば、この植木鉢。
 落としたら、どうなると思う?」

「やめ――」

そういい終える前に、
やつは――植木鉢を、窓から落としたのだった。

擦れ違い始める2人



「――花子、分かってくれや…っ」

「分かってくれって…。
 そんなこと言われたって、
 何も教えてくれない蔵の言葉をどう信じろっていうの…?」

――私は何も知らない。
蔵が何を知っているかを、何を隠しているかを。

…どうしてそんなに悲しそうにしているのかを。

そんな偽りだらけの彼を、
どう信じればいい――?



「……花子」

「私は…私、は」

まだ四天宝寺にきて浅いけど――。
信用してほしいって思ってる。

頼ってほしいって思ってる。


…それって、悪いことなのかな。


と、その瞬間だった。
私の目の前に、信じられない光景が映った。



「あ……っ、」

言葉がうまくでない。

私の視線に気付いたのか、
蔵が後ろを振り返った。


「…………っ、ゆ…うじ」


「…………。」

「ユウジ、行きましょう。
 一緒に帰るっていう約束でしたものね」

そういってユウジと腕を組んで歩いてくるのは、
さっきぶつかった可愛い少女だった――。

…どういうことなの?ユウジ。



「ユウジ?これって一体――」

「彼女。できたんや、彼女。」

「――…」

胸にこみあげてくる熱い想い。
感情。痛み。苦痛。

全てが目頭を熱くして――。

私の頬に、涙を光らせた。


「――……おめ、でとう。」

そっか。
――女性恐怖症から克服できたんだ。

そうだよね。

そういえば、最近のユウジ
私ともハイタッチできるようになってたし

…女の子のこと、怖くなくなったんだよね。

これって素直に喜ばなくちゃいけないのに。


上手く、ユウジの顔を見れない。




「………彼女、できてよかった…ね、」

「……おん。」

「――……っ、」

馬鹿だな、私。
――今泣いたらユウジが困っちゃうって分かってるのに。

…涙が止まらないなんて。


「あ…あの、大丈夫ですの?」

そういって、女の子のほうが私の顔を覗いてきた。
…そうだよね。

女慣れさせようと思って短くショートにしたけど
…ロングの長い女の子らしいこのほうが、よっぽどユウジに似合ってるもん。

お似合いだよ、2人とも。



「――花子」

涙を流し続ける私の腕を、
蔵が掴んで歩き出す。

…蔵。



「――……お前がしたいことは、こういうことなんか。」

「……どういうことかしら?」

「お前は――そうやって、
 偽りの関係を築き上げたかっただけなんやろ。」

「……だったら?」


そういうと――。
葛城は、不気味に笑った。




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