「………はぁっ、」

さすがにそろそろ部室もどらな、
みんな心配するよな。

――よし、ここはいっちょ気分かえて小春と漫才を「ユウジ、」

その女の声に、俺は足を思わず止めてしまった。
…振り返るな。

心がそう警告している。

「ユウジ…会いたかった」

そういって――…葛城益子が、後ろから俺を抱きしめてきた。

Pain


「さ…触んな――っ!」

そういって、思わず葛城を突き飛ばしてしまう。
…あかん。
花子以外の女子にはやっぱり慣れへん。

――いや、葛城やからダメなんかもしれんけど。


「……嫌ねぇ、私は感動の再会を果たしただけなのに…。」

「な…何が感動の再会やねん!
 さっさと俺の視界から消えうせろ!」

そういうと――。
葛城は、どこから取り出したのか、
ポケットからナイフを取り出すと刃をちらつかせた。

「……お、まえ――」

「ねぇ、ユウジ。
 田中花子って知ってる?」

「…………。」

「知ってるかどうか、聞いてるんだけど?」

そういって、にやりと笑う葛城。
――あぁ、嫌な予感がする。

ひんやりと頬を伝う汗。


「………。」

「答える気は、ゼロ?皆無なわけね。
 ――…そう。そっちがその気なら、こっちだって策はあるのよ」

そういうと、
葛城はナイフをポケットにしまう。



「――…あの子、
 ずたずたにしちゃおっかな…クスッ」

「や、やめや――!
 花子に手出したら、許さん…!」

そういうと、
気にくわなかったのか葛城は眉間に皺をよせる。


「…へぇ。
 あの子のこと、名前でよんでるんだ?」

「………っ」

「私のことは、名前で呼んでくれなかったのに…ねぇ?」

なぁ…花子。
俺は、どないすればええんやろーか。

教えてほしい。


.

..

...



「流石にユウジ遅いよねー」

私がそういうと、
気がぬけたような謙也が返事を返す。

「おなかぴーぴーちゃうん?」

「謙也、汚い。

まあ…もし本当にお腹ピーピーなら、
あったかいものでも買ってきてあげたほうがいいのだろうか。

ココアとかレモンティーとか…。

って、お腹ピーピーだってばれたら恥ずかしいよね。
知らないふりしたほうがいいのかな。


「うーん…。
 私ちょっと探しに行って来る」

「あ、待ちぃ。
 俺も行くわ」

「え。来るの?

何やその目。俺が行ったらあかんのかいや。」

目をゴシゴシして蔵を再度見るが――。
これは蔵なのか。

蔵なんだよね。

…何か、結構めんどくさがりな蔵だから
ついてこなさそーなのに。不思議だなぁ。


「じゃあ、みんないってきます」

「小石川、みんなのお世話頼んだで」

そういって、私達は部室をでた。


――とはいえ、
ユウジのいる場所なんて特定できるはずもなく、闇雲に探しているのだが。


「……さっき、何話してたの?」

「ん、あ――…まぁ、いろいろな」

そういって、曖昧な返事をする蔵。
――私には、言えないこと…なのか。

少し寂しい気持ちになった。

「……っそ。
 あ、そういえばね、さっきもの凄く可愛い子とぶつかったんだよね!」

「ん?かわええ子?」

「うん、お人形さんみたいなパッツンの子!
 ――見たことない顔だったけど、
 何年生だったんだろうなあ…」

っていうか、
何で私の名前知ってたんだろうなあ。

そこが怖い。


「ねぇ、蔵「危ない――!」………っ」

瞬時に何が起こったかは分からなかった。

普通に会話をしている途中で、
蔵の名前を呼んだ瞬間――。

『危ない!』という叫び声とともに、
私は誰かに抱きしめられたまま地面に転がって。

痛い腰をさすりながら、起き上がって――。


何が起こったか、状況を把握できた。



「………っ、これ……は。」

地面にちりばめられた植木鉢が、
全てを物語っていた。


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