『ユウジ』

『お願い、1人にしないで』

『私にはあなたしかいないの』

『お願い。』


『あなたが私のものにならないなら、私は――』

心の闇



「――…っ、はぁ……っ」

蛇口の水を捻って、
自分の口から出た嘔吐物を洗い流した。

…あの女の声が耳にこびりついて、
離れない。

――どれだけ俺は苦しめられればええんやろ。

…どれだけ時間がたてば、
解放されるんやろ。


『花子だけは巻き込むな。
 ――お前と、葛城の問題に。』


「……あいつだけは、
 巻き込まんようにせんなん…。」

あー、気持ち悪い。
吐くほど気持ち悪いってよっぽどやな…。

そんなことを考えながら、鏡を見た。

――少しやつれたような表情。
…ダメや。
考えただけで、頭痛がしてきた。


「……明日、学校いかんとこっかな。」

いや、それはただ逃げてるだけや。

――いずれ、
直視せなあかん現実からの。


「……花子、」

そう呟いて、
慌てて頭を横にふった。

――なんで花子の名前よんどんねん!

女か、俺は!



「……はよ、この呪縛から逃れたいわ。」

がんじがらめに絡み付いている、この呪縛。
――逃れられない。
離れられない。

…葛城益子からは。




「……どないすればええねん。
 どうすれば…俺は、道を踏み間違えんかってん。」

手の平に握っているバンダナを、
くしゃりと捻り潰したのだった。




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