俺は、花子のことが好きや。
好きやけど――。
叶わん恋やって、諦めた。

諦めて、誰かのものになることを願った――。

けど、それは『障害』があったからこそ
そうなっただけであって。

――もし、その障害が…口実が消えれば、俺はどないすればええねん。


「……ユウジ。話しが、あるの。」

そういって、葛城が俺と一対一で話しをかけてきた。




「……もう、別れましょう。
 私は二度と貴方に関わらないし、田中さん…いえ、花子にも手をださないわ。

 今まで本当にごめんなさい…っ」

今更…そんなこと言われたって、
どないすればええねん。

自由と消えた口実


――ついに、私とユウジの2人っきりになってしまった。
あーやばい。
冷や汗がタラタラだ。

……そういえば、
私…ユウジの退部届けも持ってるんだったっけ。

渡さなきゃ――。

「あのさ――」「あんな――」

同時に言葉を発して、
慌てて私は一歩下がる。

「あ…いいよ、ユウジが先に…!」

「いや、花子が先にいえや…!」

「いや、ユウジが――」

「花子が先でええやんか――」

そんなことをあーだこーだ繰り返しているうちに、
私達は普通に溶け込み…。


「……もうええわ。諦めた。
 俺から言わせてもらうで」

「はいはい、どーぞ」

と、いつものような2人に戻っていた。

……まともに話せることが嬉しい。



今目の前にいるのがユウジなんだ。
なんて、改めて実感したりもする。


「――俺な、考えてん。」

「……うん。」

「花子のこと無視したり罵倒したり――。
 …葛城がお前に手ださんようにって、俺なりに…頑張ったつもりやった。」

……私の、ために。

「……せやけどな、
 いつからか――お前が白石と丸井と仲ええとこ見て、
 俺は…嫉妬、してたんや。」

「………。」

「かっこわるいやろ。やきもちなんてして…。
 葛城と付き合ってって言われたときは脅しもあったけど、
 何よりそっちのが傷ついとって――。

 俺は…抵抗もせんとすんなりとそれを承諾してもうた」

ユウジが…嫉妬?



「っでな。

 ――俺は逃げて逃げて逃げて…。
 『葛城』っていう口実をつくって、
 自分の気持ちにずっと嘘をついとった」

「……ユウジ、」

「……自分の気持ちに気付くのが怖くて。
 誰かを…愛することが怖くて、
 自由をほしがりながらも、どこかで束縛を願ってたかもしれん。」

いろんな思い出が、
頭の中で走馬灯のようにかけめぐる。

――立海から四天宝寺へ来て、
ユウジが…あの、
バンダナの王子様だなんて思わなかったなあ。

それで冷たくされて――。

いろいろあって、
ちょっとずつユウジも心を開くようになってくれて、
アホみたいな私と他愛も無い会話をしてくれて。

――時には、
小春に嫉妬したりもして。


「……俺の、気持ちを聞いて…ほしいねん。お前に――」


「………。」














「俺は、花子のことが好きや。
 ずっと…、ずっと好きやった。」



そういって、ユウジが頬を赤らめた。



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