……裏庭の木陰で2人で座るところまではよかったけど、
なんで…

なんで花子は、シロツメクサで遊んどるんや。

あかん。告白するムードなんてないやんけ。

「あ、蔵見て!シロツメクサにてんとう虫ついてた!」

そういって、嬉しそうな顔をして俺にてんとう虫を見せてくる花子。
――あかん。

この状況はあかんで。

自由と解放と思惑



「…あ、そういえばね。
 さっき益子と話したよ」

「……益子?」

「あー、葛城さんだよ」

そういいながら、私はてんとう虫を適当に遠いところへひょいっと投げておいた。
――命は大切にしなきゃね!

「………っ、お前…何もされんだんか?」

「いや…そりゃあ襲われたけど「アホ!」

そういって、思い切り頭をどつかれた。
――容赦ないんですけど、蔵。

「……いった!でも、
 この通りぴんぴんしてるじゃん!」

「そういう問題やないやろーが!
 もし…もし、向こうが団体やったらどうしてたん?」

団体だったら――。
それは…まあ、私が負けてると思うけど…さ。


「…でも私、これでも結構喧嘩強いんだよ」

「………」

「立海のみんなとプロレスごっこして遊んだりとかしてたおかげかな。
 ――今それが役立ってよかったよ」

そういって、私は
シロツメクサを一本一本引きちぎって組み合わせていく。

えーっと…確か、こうやって作るんだっけな。



「葛城に、何されたん?」

「まずね、スタンガンだされて――。
 弾き飛ばしたら、今度はナイフ出してきて。

 …で、まあいろいろあって仲直りっていうか……友達になれたよ。」

「…そこまでの経緯が聞きたいとこやけど、
 お前…ほんま危なっかしいわ」

「伊達にボス猿っていうあだ名だったわけじゃないからね!」

そういうと、
蔵が頭をなでてきた。


「……なぁ、いっとくけど――。
 花子は女の子やで」

「……え?え、何当たり前のこと――」

「ユウジは。……ユウジは、花子のこと…女としてみてないんちゃうんかな」

「………。」

そういうと、花子が黙り込んで下に俯いた。
――そんな傷ついた顔すんなや。

…何か、悔しいやんけ。


「……ユウジの、どこがええねん」

自分の口からでた言葉は物凄く弱々しくて――。
今にも消えかかりそうだった。


「……どこがいい、っていわれたら正直…わかんないよ。」

「………」

「けど――。好きになっちゃったなら、
 仕方ないんじゃないかな。

 欠点も何もかもを愛しちゃうんじゃないかな…」

あ、何言ってるんだろ自分。
――蔵に何堂々と愛してる宣言してるんだろ。

っきゃー。
なんか恥ずかしいな。

「…何もかもを…ねぇ、」

「………まあ、叶わない恋だって自分が一番知ってるから。
 あ、これあげるよ。餞別。」

そういって、蔵にシロツメクサで作り上げたリングを渡した――。


「……手先器用やな」

「でしょー。
 っていっても、お花でできてるから鮮度はないんだけどさ…」

そういいながら、
今度は私は四葉のクローバー探しを始めた。

…見つけたら何かいいことありそうだしさ。

それに…、
願い事をクローバーちゃんにかなえてもらいたいしね。



「……お、あったぁぁぁぁあぁ!
 て、六葉やんけーい!

ちょ、四葉のクローバーどこだどこだ…!


「お、ここにあったで」

「え、ほんと?!」

そういって、蔵のほうをくるっと振り向いたときだった――。



「――嘘、」

そういって、
蔵が私を押し倒してきた。


……やばい。これはいけない気がする。

そう思って、蔵から逃れようと脱出をこころみようとした瞬間だった――。


「………あかんよ、花子。
 俺から逃げんのは――」

…頭の回転が止まったかのように、
私は自分の目の前の光景を疑った。

……唇にふれる、あたたかい感触。



「――…っゃ…!」

そういって、顔を背けた瞬間だった。


「……もっと」

そういって、
蔵が私の顎を掴んで更に強く、強く口付けてきた。

……苦しい…っ。




「……蔵…っ」

「………すまん。我慢…できへんだ」


そういって、蔵はその場から立ち上がると
申し訳なさそうに足早に去っていった。

…1人、残された自分。

唇に残された感触に、
思わずたじろいでしまう。

――何故だかむしょうに、
ユウジの顔が見たくて仕方なかった。



ポロッ。

「……あ、れ…泣いてるの……?」

自分の頬に、数滴の涙が零れ落ちた。


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