友達。
そんなもの、私には1人もできることがなかった。

――小学校の頃、初めていじめをうけて…。
それがトラウマになって、中学では顔を隠すような生き方をしていたはずだった。

――私には、何で友達ができないんだろう。
何が…おかしかったんだろう。

そんな時に現れたユウジは、
私にとっては…希望の光であって、
それでいて…とても、とても輝いて見えた。

手が届きそうで届かない位置にいるユウジ。

だからこそ、縛り付けることでしか引き止めることができなかった。

新しい友達



「………葛城さん、大丈夫?」

葛城さんはまだ目を赤くしているが、
だいぶ泣き止んだみたいだった。


「……えぇ。大丈夫よ」

「……そっか。ならよかったけど、」

「――あなた。
 相当…お人よし、なのね」

そういって…葛城さんが私を変なものを見るかのような目で見てきた。
あ、なんだその目。

「……益子で、いい。」

「……え?」

「だから、名前!――名前で、よびなさいって…」

そういって、ぷいっとそっぽをむく葛城さん。
いや――益子。


「……益子、」

「………花子…って、よぶけどいいでしょ?」

何だか女友達が減少している仲で、
こうやって名前を呼び合える関係って希少価値が高いと思った。


「……うん、花子でいいよ」

そういって微笑むと――。
益子も、ぎこちなくだが、微笑んだ。


.

..

...


「花子遅いなあー。
 なぁ、白石もそう思うやろ?」

「……ん?あ、あぁー。
 …また前みたいに、何かに巻き込まれんとけばええんやけど、」

――葛城とまた何か事件を起こしているのではないだろうか。
そう思うと、凄く心配になってくる。


…花子は凄くアホだ。馬鹿だ。
だからこそ――プールに沈められていた件については、
『友達とSMプレイごっこしてて、
 友達がどっかいっているうちにプールに落ちちゃいました。あはは』
なんていって誤魔化していた。

――アホか。

SMプレイでもそんな危険なことはせんやろ。



「……なぁ、謙也」

「んぉー?」

「花子って…ほんま、アホやよな」

そういうと、謙也が――。
じっと俺の目を見てきた。

「……何やねん、急に。」

「いや、聞きたくなっただけや。
 ――あいつ、ほんまアホやよな」

「せやな。相当のアホやで、あれは」

そういってへらっと謙也が笑った。

「……でも、そんなところ気に入ってるくせに」

「――っ、は?」

「こんのー!白石め、"恋してます"って顔してたでー!」

そういって、謙也に小突かれる。
…って、謙也ごときに好きな相手ばればれな俺って、
相当…相当デレデレなんか?

そうやったんか?!


「……せやけど、花子の好きなやつはユウジやん」

「……白石」

「俺では――ないんや、」

どんなに好きでいたとしても、
花子は…俺を見てはくれないだろう。

…きっと、ユウジには勝てない。

だからこそ、こんなにもユウジに苛立つのだろうか。


だからこそ――ユウジを、殴ってしまったのだろうか。




「……当たって砕けてこいや」

そういって、謙也が俺の背中をばんっと叩いた。


「――っ!
 何し「当たって砕けたほうが、スッキリするで!」


そういって、屈託のない笑顔で謙也が微笑んだ。
――なんや、こいつ。

失恋前提に話しすすめられてちょっと傷ついとるで、ほんと。



「……はは。
 まあ――せやな。認めたないけど謙也の言うとおりかもしれへんな」


自分の気持ちを隠しもっているよりも、
思い切って――打ち明かしたほうが、楽になるかもしれない。



「……じゃあ、俺いってくるわ」

「おん!いってらっしゃーい」

そういって謙也がぶんぶんと手をふるなか、
俺は廊下を駆けた――。




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