「……オサムちゃん、今…ユウジと何話してたの?」

「ん?あぁー…まあ、これの話しや」

そういって、オサムちゃんが机の引き出しから出したものは――。

煙とオサムちゃんと退部届け


「って、オサムちゃん。
 冗談は顔だけにしなよ。

お前相変わらず失礼やな。
 まあ退院したばっかで、いろいろ頭がごちゃごちゃしとるんかもしれんけど…一氏が決めたことなんやし、ええんじゃねーの」

そういって、煙草をもくもくとふかすオサムちゃん。

けむっ。マジなんなんだよ、このおっさん。
やる気あんのかよ。

「……退部届けって。
 理由はなんて言ってたの…?」

「ん?あー…なんかテニス向いてないからっていってたよーな」

「……何なんだよ、その理由」

おかしいでしょ。
――テニスが向いてないとかで辞めちゃう程度だったの?ユウジは。

…そんなわけ、あるはずがない。


「…オサムちゃん、ちょっとこれ貰ってくね」

「って、おま…!退部届け持ってくなアホー!」

オサムちゃんのぎゃーぎゃーいう叫び声を聞きながら、
私は退部届けを手に持って走り出した。

ユウジ…どこ?

どこにいったの?


「……まあ、若いうちの青春やからな。
 っぷは。俺は煙草と青春中かいな」

そんなことをいいながら煙を口から吐き出す。

っぷはー…。
煙草ってやみつきなる。怖いな。


「……んま、
 最初から一氏辞めさせる気なんてサラサラなかったし

 ええ機会かな」

そんなことを言いながら、灰皿に煙草をなすりつけた。



.

..

...


「……謙也。大変だ。」

「なんやねん、花子」

「これを見よ――!」

まるで水戸黄門のように私はユウジの退部届けを謙也に見せた。

「…退部届け?!って、花子がか?!

アホか。……ユウジが、だよ」

そういうと、
謙也は何故だか納得したように「あぁー…」と頷いて見せた。


「……そういえば、蔵は?」

「今保健委員会の仕事で呼ばれてったで。
 …しばらく帰ってきぃへんやろ」

っていうことは謙也と2人っきりか。
なんか卑しいな。

――そういえば、謙也とあんまり話したことないから
変な感じだなあ。


「ユウジの退部届けにさ、何か心当たりはない?」

「あー…あー……。あーあーあー」

そういって、謙也は
わざとらしく視線をそらして「あーあーあーあー」言っている。

…凄い分かりやすいなあ。

「何隠してるの?謙也。」
「ん?何も隠しとらんけど?」

「――あ、言わないならこの消しゴム全てゴミ箱に「言う!言うっちゅーねん、せやからイグアナ消しゴムを今すぐ筆箱に戻してや!

そういって、
半泣きになって私にすがりついてくる謙也。

――謙也、ちょろいな。



「…あんな、花子が入院してて寝てた日あるやんか」

「……うん。」

「あの日、俺ら全員で花子のお見舞い行ったんや」

「……うん。」

「そんだら、まあ…白石がいろいろあってユウジに切れて、
 "退部しぃや"発言してもーてん。
 そしたらユウジがそれ本気にとってもうたっちゅー話しなんやないんかな」

……そのいろいろが知りたいところだが、
あの蔵がユウジにきれる…?

いや、私が四天宝寺に始めてきた日
ユウジが相当の女嫌いで蔵がきれたのは覚えているが――。

……また、きれた?


「…あんな、花子。
 白石はああみえて――結構いっぱいいっぱいちゃうんかな」

「………、」

「なーんて今言ったことは全て内緒っちゅーことで!」

そういって、謙也がパンパンッ!と手をうってから
お開きポーズをとった。

……何だか、
よくわからなかったが

――蔵とユウジをあわせて話しをさせる必要があるんだよね、これ。



「…ん、ありがと。謙也」

「ん。どーいたしまして」




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