「えーっと…タオルはこれで全部か」

私はタオルの山を両脇に抱えると、
そのまま部室をでようとした。


「……こんにちは、田中花子さん」

後ろからそんな声が聞こえてきたと思ったら、
後頭部に鋭い痛みが走って――そのまま私は意識を失い地面に倒れる。

…朦朧とする意識の中、
私は確かに――やつの声を、聞いた。

「……邪魔だから、消えてもらうわね。」

と。

魔の手


「あれー?何か、
 誰か足りんよな」

「え?誰かおりませんでしたっけ?
 もしかして、小石川さんちゃいます?」

「……俺はここにおるけど、」

そういって、
地味という言葉が物凄く似合う小石川が顔を覗かせた。
――おぉ。

小石川がおるっちゅーことは…誰が足りひんのやろ?

「んー……んー、誰がおらんのやろ。」

「謙也さん。
 ………そういえば、花子さんどこにもいませんけど」

って、ほんまや!
 白石大変や!花子がおらへん!」

「花子?マネージャーの仕事中やろ。」

「っていっても、妙に長すぎやしませんか?」

「ちんたらしとるんとちゃうん?
 あの花子やで?人の何倍も時間かかるような人間やから、気にせんとき。」

そういうと、
謙也も財前も納得したように頷いていた。

…っていっても、
さすがに…遅すぎやしないか。花子。

アイツ――。

戻ってきたら全員でどついたろ。
決めた。
仕事の遅いアイツが悪いんや。



「……よし、俺も次は1年と相手せんなんしな。」

「おーい、白石!
 試合始まるばいね!」

そういって、慌しく千歳が手をふりながらやってきた。
――その時の俺は、
花子に危険がせまっとるなんて一つも感じなかった。

「(…1年しごいたらな、
 全国で優勝なんて目指せんからな。)」

そんな先のことを考えながら、
俺は試合に励んでいた――。


.

..

...




「………って、なんで私こんなところに閉じ込められてんだろ。」

そんなことを呟きながら、
自分のいる部屋をぐるりと確認する。

――特有のにおいと、
たくさんのロッカーがあることからして…ここは水泳部の部室だな。


「…しかも、凄い縄の量。」

逃げられないように、
これでもかというくらい何十にも体に巻かれたロープ。

――…しかも、見事にイスと体が固定されていて身動きができない。


はぁ…どうしようかな、この状況。

携帯とりたくても取れないし…っていうか、
携帯がポケットに入っているかすら確認できない。

うーん…大声出して助けをよんでも、
なんせ水泳部の部室だよ。

…水泳部の部室って、体育館のちょっと行ったところにあるし
人があんまり通らないから
助け呼んでも無駄って思ったほうがいいんだよね。

あー。

どうしよう。どうすればいい。


「……っていうか、何があったか全く理解できないんだけど…」

確か、洗濯物してて、
竿に全部かけ終えてから

そういえばタオルがまだ部室にあることを思い出して取りに行って――。

それで…。


そうだ!

タオル持って部室でようとした瞬間に、
葛城さんが私の名前をよんで振り返る間もなく後頭部を殴られたんだ!


…まさか、
葛城さんが部室に隠れていたなんて思いもしなかったなあ。


「……助け、くるかなあ。」

ポソリと呟いてみる。
あー。

トイレ行きたい。
何とかしてこの縄ほどけないかな…。


「……このまま誰も助けにきてくれなかったら、
 私お漏らししちゃうなぁ。

 そしたら学校の大笑い者じゃん。」

そういって、苦笑する。



…っていうか、
今は何か明るいことを考えないと心がくじけちゃいそうだ。


ユウジ…今頃葛城さんとラブラブしてるのかな。
そんなことを考えると、
胸がぎしっと痛む。



ガチャッ。

扉が開く音がして、
私は目をそちらに向けた――。



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