「なぁ、葛城。
 俺…もう、疲れたわ。

 別れよう」

男女ならではの別れ。
――いつの間にか、俺の熱は冷めていた。

…今は、恋愛よりテニスに集中したい。
そう思って告げた別れが、元凶だった――。

過去3


「な…何言ってるの、ユウジ…?」

そういって、信じられないといった目で
俺を見ている葛城。

――…もう、葛城に好きといった感情はなかった。


「……別れよう。
 俺はテニスに集中したいんや」

「……っ、や……嫌よ!
 私は絶対嫌!」

そういって、俺の腕に泣いてすがり付いてくる葛城。


「……嫌……」

そういって、わなわなと震えだす。


「ゆ…ユウジがいなくなったら、
 私いじめられるじゃない!

 ユウジがいなくなったら…私は……!」

「――……っ」

「いじめられたくないの!
 お願い、そばにいて――……っ!」

その言葉を聞いて、
俺の何かがガラガラと崩れ落ちる音がした。


……そうか。

葛城は、俺のことが好きなんじゃなくて
『いじめられたくないから』俺と付き合っていたのか。

…何や、俺の片思いやった…ってわけやったんか。


「………もう、無理やわ」

「ユウジ――!」

「……いじめられたくなかっただけやってんろ?
 俺を…駒のように、使っててんろ?」

「嫌、ユウジ――!」

「さよなら…やわ。」

そういって、クルリと後ろを振り返った時だった。



「……そう、私のものにならないんだね。
 なら――」

ちらっと後ろを振り返った瞬間だった。


――鋭利な刃が、
葛城の腹部に突き刺さるのが見えた。

…頭の思考回路が止まる。


ドサッ。

俺の目の前で、
葛城は――。

ポケットに入れていたナイフで、
自分の腹部を刺していた。


――…葛城?

「……かつら、ぎ?」

「…………」

「お……おい、葛城!葛城……っ!」

そういって、葛城の頬に指をふれた。
――冷たく、なっとる?

「葛城……っ!」

「……い、ゃ………わた…しは、
 はなれ…ないから………」

その瞬間、
全身に鳥肌がたったのが分かった。

――狂ったような想い。

いや、葛城は俺のことを見ていない。

――駒として、
俺のことを見ていた。

自分のことだけを…考えていた。



「………ゆ……うじ………」

「かつら…ぎ……」



女が――葛城が、怖い。
ここまで狂えるものなのかと目を疑った。


怖い…怖い。

怖くて怖くて、
逃げたくて――。



「ユウ君!ユウ君、しっかりして!」

「こ…小春っ」

「……ユウ君は悪ないよ。
 せやから…自分責めたらあかんよ」

そんな小春の言葉が優しくて、
思わず涙を流してしまった。

――何がいけなかったんやろ。

出会ったことすら、
いけないことやったんやろうか。


……なぁ、葛城。


俺はもう…誰かを愛することが怖くなった。

怖くて怖くて…体が震えて。




「……もう、恋なんて、」

できへん。

そう思った。





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