「俺がお笑い始めたんは、ある女の子を元気づけるためやった。
 そん時は女子も怖くなくて、
 今みたいな――…小春にべったりな漫才でもなかった。」

ポツリ、ポツリ。

ユウジが、本音を打ち明けだした。

過去1


「お前まじできもい。うざい。
 っていうか、死んだほうがいいよ」

「ほんとー目障りだよね」

「うんうん」

そういって、女子がよってたかって
1人の女子にむかって集団でいじめをしていた。

――っわぁ。

こんな男子おる前で堂々といじめって…。
そんなことを思ったはしたが、
俺は止めなどしなかった。

――それより漫才について考えよ。

最近になって、
小春が俺にこういってきた。

"ユウ君さ、お笑い始めん?
 うちらでお笑いやったら相当おもろいことなるで!"と。

――まあ、退屈しのぎ程度やからええんやけど。


『ユウジの漫才おもろいわー!』
『一氏君の声真似すごーい!』
『お前、怖いやつ思ってたけどおもろいやつやってんな!』

と、
初ステージが終わった後はクラスの人気者。

…お笑いって、凄いわ。

小春がピースしてにっと笑った。
……ほんま、小春はええやつ。

小春のおかげで、
あんまりクラスでは目立つほうではなかった俺は、一気に人気者になった。


――そんな時にいじめ見るって、何かテンション下がるわあ。

やるなら陰でやれや。
って、陰でやってもいじめはあかんけど。


「………。」

「おい、何とか言えよ…!」

そういって、1人の女子生徒が思い切り手をあげた。
――パァンッ!

教室に響いた乾いた音。

………うわぁ。ほっぺ真っ赤になってるやん。
痛そう。

最初は、それぐらいにしか思わなかった。


「……もう、ええわ。さっさと学校やめれや」

捨て台詞に、女子生徒たちはそう言い放っていった。

…っていっても、
いくらなんでも今のはかわいそうやったなあ。

……何か、声かけてあげようかな。


「……なぁ」

「…………」

「……無視か。おい。」

「…………」

「……痛くないん?ほっぺ。」

そういうと、その女子生徒が顔をあげてこっちを見た――。
…正直、言葉を失った。

なかないようにと、
必死に堪えている涙。

…あぁ、こいつは無理してたんやな。

そう思った俺は、そいつの腕をとって走り出していた。


「あ、ちょユウ君――?!」

小春が俺の名前をよぶ声が、
遠く後ろから聞こえていた。

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