「…あーぁ。やっぱ…こうなるか。」

そういって、
蔵がへらっと笑いながら頭をかいた。

――蔵……っ。


「…引き立て役しよー思ってたけど、
 俺…結構本気やってんな…。」

そういって笑う蔵の笑みは、
――引きつっていて。

それでいて、ユウジを羨ましそうな目で見ていた。



「……なぁ、花子。お前は悪くない。」

「……蔵っ、」

「――お前の心の傷につけいったんは俺や。
 …知っとるか、こういう話しを。」

そういって、蔵は一息つくと、
静かにこういった。

一時の夢をありがとう






「…傷ついとる時に、誰かが助けてくれると
 それを錯覚として恋やと思ってまう時が人間にはあるらしいんやわ。」

「………えっ」

「まあ、小説にあったからほんまかどーかは分からん。
 …花子は、今それにピッタリあてはまるやろ?」

そういってニッコリと微笑む蔵。
――どこまでも綺麗で、
どこまでも悲しくて。

……蔵をそんなふうにさせているのは、
今他でもない私なのだ。



「……っ、」

「花子。一瞬でも俺と付き合おう思ってくれてありがとな。」

「――、蔵……っ」

「きたらあかん!」



そういわれ、思わず足がすくんだ。



「……きたら、あかん。
 もう…お前は自分の気持ちに気付いたんやろ?」


「……蔵、」


「……なら、後は前に進むだけや。
 後ろは振り返るな。ただ…進め。」


「…………っ、ありがと、蔵…っ。」












「ありがとういうんは俺のほうや。

 一時でも、暖かい夢みれてよかった。


 ほんま…幸せやったで。」



「………っ」



「……やからな、花子もユウジと幸せになりや。
 俺なんかに縛られたらあかん。」


「……白石、」


「2人とも――ほんま、不器用すぎや。」

そういうと蔵は笑いながら屋上からでていく。
――その背中を追って止めることなんてできなかった。




「(…ありがとう、蔵。)」

ただ、今は蔵への感謝の気持ちでいっぱいだった。



……私のことを、好きになってくれてありがとう。
見ていてくれてありがとう。


――ほんの少しの時間でも、




幸せだといってくれてありがとう。




ポロポロとこぼれる涙は、悲しみか幸せか。
…はたまた両方なのかは、自分にはよくわからなかった。




「……泣くなや、ドアホ。
 そんな顔白石にみられたらどつかれるで」


そういって、コツンとユウジが私の頭をつついた。



……ユウジっ。


「〜〜、ユウジ…っ」


「な、なんやねん!何で急に抱きつくねん!」


「……ありがとう。私のこと好きになってくれてありがとう、」


そういって震えているのは私の声。


「……っ、
 ほんま……お前とおったら心臓もたんわ…」


そういうユウジの体が、かすかに震えていた。


これからずっと一緒だね。
家も何もかもが隣同士の私達。



――友達以上、恋人未満の関係からやっと脱出できたのだ。



ずっと叶わないと思っていた恋心。
秘めてきた願い。

それが…実現するだなんて、思わなかった。




「……好き、ユウジっ」


「……おんっ、知っとる」


そういうとユウジが私の頬に優しくキスを落とした。





「――…これで、勘弁」

そういうユウジの顔はたこのように真っ赤になっていて。
――それがとても可愛らしくて、仕方がなかった。





「(…ユウジが、大好きだ。)」



この気持ちはどうにも止められそうにないらしい。




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