……俺は、時計を見てまた再度携帯とにらみ合いを始めた。

…本来なら、
今すぐにでも窓ドンドンして隣へ行きたいくらいや。

けど…今は、喧嘩した状態や。
そんなんできるわけないし…。

想いは届かない


〜〜♪

9時23分。
これぐらいの時間帯やったら、
やることなくってゴロゴロしとる時間やろ、
おもって電話をかけてみる。


『………はい。』

案の定、花子は電話にでた。

あー、やばい。
緊張して手汗が…。


「……あ、あんな…花子。」

『……うん。』

「……その、ほんまにすまんかった――!」

『……え?』

「お…俺、勘違いしてもーて…。
 ほんま、すまん……!」


『ゆ……うじ……。』



私はただ、ユウジの謝罪の言葉に
どう返事を返せばいいか頭の中でぐるんぐるん迷っていた。


『……あんな、花子』

「ん?」

『それとな――話しときたいこと、あんねん。』


そういうと、
ユウジは緊張した声で…こういった。




『花子のことが好きや。
 小春に叱咤されて気付いたんやけど、
 俺…俺、小春に嫉妬したんやない。

 花子に…嫉妬、しとったんや』

「………ユウジ」

『………返事、聞かせてくれる?』



私は今にも落としてしまいそうな携帯電話を、
必死で握り締めた。

…どれだけこの瞬間を待っていたのだろうか。


けれど、
それは今の私には絶望の言葉でもあった。


「………私、蔵と付き合ってるの。」

『………え?』

「今日。蔵と…付き合ったの。」

『…………。』

「ごめん…だから、ユウジとは付き合えないから。」


そういうと、
私は電話をぴっと切った。

――馬鹿だなぁ、私。

自分の頬に流れている涙が、なによりの証拠なのだとおもった。



「(こんなに嬉しくて…嬉しくて、仕方ないのに、
 胸が苦しい。)」

…心がぐらぐら大きく揺れている。
ダメだ。私には蔵がいるじゃないか。



「………遅いよ、ユウジ」

遅すぎたんだよ、ユウジ。

――私達、
タイミング悪く…ずれちゃったんだね。

何がダメだったのかなんて、私には分からない。


「……ユウジ、」

そう呟くと私はベッドにダイブした。
――耳に残っているユウジの言葉だけが、
まだ熱をこめていた。



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