ご飯作りましょ!
「なぁ、花子。
白石と何話しとったん?」
「ん?いや、特に。
洗濯物干すの手伝ってもらってたぐらいだしさ」
「あ、せやったん!
それより、今日はオクラ使った料理にしてくれや。」
そういって、ユウジが微笑んだ。
…何だよ、そのかっこよさ。
その笑顔。
私の胸は、いつもこの笑顔にキュンキュンしている。
「…オクラの味噌汁に、オクラのサラダ。
オクラのデザートに、オクラのご飯……」
「オクラ使った料理は一品だけだからね。」
「えぇ!なんでや…!」
そういって、ユウジが大きく目を見開いた。
――オクラばっかり食べたくないっつーの!
トントントントントンッ。
私は包丁で丁寧にかつ迅速にオクラを切っていく。
――とうの、ユウジはというと。
「…オクラのデザート作りたいんやけど、
レシピどの本にものっとらんねん…。」
ってなかんじで使い物にならない状態なんだよね。
まあ、ユウジはこう見えてかなり手先が器用。
作った料理はめちゃくちゃ美味しいし――。
…私なんかより、随分と家庭的なもんだ。
い…いつかはね!
『お嫁さんにしたいわあ』なんていわせてやるって決めてるもん!
「あ、今日の献立はオクラの味噌汁とハンバーグ、白ご飯でいいでしょ?」
「ハンバーグにもいれてな!」
「え、それマジでいってる?」
オクラについて熱弁するユウジの熱い思いにより、
ハンバーグにもオクラを入れることにした。
…ユウジに愛されているオクラが羨ましい!
オクラになりたい…!
「なぁ、そういえば花子のお母さんまだ帰ってきぃへんな。」
「んー、今日はお仕事長くなるってさ。」
「ふーん。」
今日はユウジの両親が海外旅行に行ったらしく、
私の家で夕飯を食べることになった。
――だから部活を1時間早く切り上げてきたんだよね。
ご飯作るために。
…それにしても。
二人っきりなんだよね。私達。
「……なぁ、花子」
「は…はい?!」
思わず声が裏返りそうになる。
し…心臓がドキドキしてきた!
振り返ると、ユウジが目を細めて私を見ている。
…な、何。
何だ、その表情は…!
「どどどどどどうしたの?!」
「血、でとるで」
「うわぁぁぁ!本当だ!」
知らない間に、
私はオクラじゃなくて自分の人差し指を包丁で少し深く切っていたのだった。
あー、やばい…!
血、めっちゃ出てるじゃん…!
「ど、どうしよ…」
「指貸してみ。」
そういって、ユウジが私の手首を掴み――。
そのまま私の人差し指に舌を這わせ、血を舐め取る。
きゅんっ。
って、何ときめいてるんだ自分…!
何なんだこの展開…!
「あ、あの…!ユウジ……?」
「……ん。舐めたで!」
そういって、ユウジがにこっと微笑んだ。
――悪気がないあたりが、ユウジらしいというかなんというか。
「……ありがと」
「どーいたしまして。
オクラが血だらけなるのは見とれんもんな」
あ、オクラの心配でしたか。
なんて残念に思ってしまう自分がいたりもした。