ただ、お互いが近すぎて見えないこともあった。

距離が近ければ近いほど、
相手の存在がどれだけ大切かなんて分からなくなる。


――そして、
自分に秘められた気持ちに気付かないままでいたりも。


…そんなことを繰り返しているうちに始まったのが、
私達の恋。

友達以上恋人未満な私



『っもー、花子ちゃんもユウ君もお似合いやわ!』

そういって小春が一番嬉しそうに私達を祝福してくれた。
…何かね、とっても幸せすぎて、
これが本物かどうかなんて分からなくなるときもあるんだ。正直。


――けど、
隣にいるユウジの体温だけが確かに私に現実だと告げてくれている。






「何ぼーっとしとるん?
 ほんま、お笑いぐらい集中してみんかい」

私がぼーっとしていると、
私の様子に気がついたのかユウジが指摘してきた。

――今私達はというと、
部活が休みということで私の家でお笑いのテレビを見ているのだ。

ユウジはこれが日課で、
かかすことなどない。


…はぁ、私をほっといてお笑いテレビにどっぷりはまりこみそうでなんだか怖い。




「……花子?」

「あ、ううん。なんでもないよ」

そういうと、
ベッドに横になりながらテレビを見ていたはずのユウジが立ち上がりテレビをぷちっと消した。

えぇ…?!
何故消したの…?!



「こっち…こいや、花子」

「え?え、えーっと…。」


私がうろたえていると、
ユウジが私の腕をつかんでぐいっとベッドに引っ張る。

って、おま…ちょ……!



ボスッ!


気がつけば、
目の前にはユウジの顔が。

し…至近距離辛い!眩しい!恥ずかしい!

いろんな感情が一気におしよせてきて、
私は顔が真っ赤になる。



「ちょ、ちょちょちょ――」

「花子、待ちぃ。……俺の心臓、聞こえる?」

心臓の、音…?
私はそっとユウジの胸元に耳をよせた。

ドクドクドクッ。

一定にうっている心臓の音はとても早くて――。
今にもパンクするんじゃないかっていうほどだった。



「……俺、ほんまにチキンや。」

「……え?」

「2人っきりになっても…テレビみたりとかで、
 手とか滅多にださんから…。

 花子、もしかしたらあきれとるんかと思って、」


ゆ…ユウジ!
可愛すぎる…なんだ、それ。

あきれてるわけないじゃん。

――私には、ユウジしか映っていない。





「……なぁ、花子。
 もう…チュー、してもええかな。」

「……チュー?」

「…おん、チュー。
 っていうか、もう聞かんでもええか」

そういうと、ユウジは私の手首をつかんでグルンと回転。

あっという間に、
ユウジが私を押し倒す形になってしまった。



「え?えーっと、あの…ユウジさん?」

「覚悟しぃや、花子。
 ――俺と一心同体になったことが運のつきやな!」

「って、ちょちょちょま――」



そんな抵抗もむなしく、
私の唇にはユウジの柔らかくてふにっとした感触があたっていた。

――今までどれだけこの瞬間を待っていただろうか。

好きな人とのキスが…こんなに、幸せだなんて。
時が止まってしまえばいいのに…っ。



「…なぁ、花子」

「え?」

「……ずっと、ずっと一緒やからな」


そういうと、ユウジがもう一度優しくキスをした。
――この優しいキスもユウジの優しさも何もかもが暖かくて愛おしい。




「……ずっと、一緒だよ。私達」


そういうと
ユウジは安心したのか柔らかく微笑んだ。


ガチャッ。


「2人とも、お茶とお菓子――」



「「あ。」」



「…………っひ」


そういうと、
たまたま私の部屋へ入ってきたお母さんが
私達をみた瞬間ビックリしたのかお盆をもったまま「ひぃやああぁぁぁ!」と叫びながら階段を駆け下りていく音がした。


……そうだよね。
この態勢からいって、
ユウジが私を襲っているように見えるからね。



「……どうしよう、ユウジ。」

「……ほんまやな。」

「……私めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど。」

「――まあ、いずれ言わんなんことねんから
 もういってもええんやないかな。

 ……俺ら、つきあっとるって。」

「……そう、だね。」


改めて言われると顔が赤くなる。





…幼馴染で家が隣同士ではたまた同じ学校の私達。

近くにいすぎてわからなかったけど、
これが…恋なんだね。





「…ほんま、道は長いわぁ。」

「だね」

「……もっかい、キスしよか。」


「……んっ、」





何度でも、君にキスをあげよう。

――終わりのない愛を、
無償の愛を…ただ全力で捧げたい。



ほんま、好きっていう気持ちははかりしれんわ。



「(…花子に、)」

「(ユウジに、)」

「((出会えて本当によかった。)」」





fin.







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