ガラッ。

授業が終わり、
次の授業の用意をしていると誰かが扉を開いて私の名前をよんだ。


「……っ、花子」

「………ユウジ。」

「ちょっと…屋上こいや。」

そういって、ユウジが私のもとへよってくると腕をつかんで無理矢理にでも連行しようとする。


「あ、ちょ…「女の子にそんな扱いしたらあかんやろ。」

そういうと、蔵がユウジの腕をつかんで私とユウジを引き剥がした。


険悪ムード



ピリピリと感じる2人の険悪ムード。

「……あ、あのさ」

「白石には関係ないやろ。」

「大有りやで。俺の彼女やもん。」

私の入る隙間なんてない。
――どどどどうしよう…?!


「人の彼女に手だして、黙ってみとれるかいや。」

「…………っ、
 せやけどこっちだって話しあんねん!」

「――今更何の話しや?
 花子のこと…信じんかったお前が、何の話しあんの?」

そういうと、
ユウジは一瞬凄く傷ついたような表情をした。


「………確かに、俺は花子を傷つけた。」

「………。」

「せやけど、話しくらいちゃんとつける権利くらい俺にもあるやろ。」

そういうと、
ユウジは私の手を引いて教室から引っ張り出す。

あ、蔵……っ。


私が蔵のほうを振り返ると、
蔵は何故だか知らないけど悲しそうに目を細めてこちらを見ていた。


引き止めることも、
反論することもせず。

ただ、じっと…私達のことを、見ていた。





.

..

...




ガチャッ。

屋上へたどり着くまで、
私達は無言だった。

――沈黙という気まずさのなか、私はいろんなことが頭の中でもんもんと繰り広げられていた。

蔵は何で引き止めてくれなかったのか。
ユウジの話しってなんなのだろうか。
2人はもしかして仲が悪いのではないだろうか。
それってもしかして自分のせいなのではないだろうか。


――…そんなことをいくつも考えていれば、きりがないのは分かっている。

…けれど、考えずにはいられなかった。



「……あんな、」

「………っ」

「何ビクビクしとんねん。」

ユウジがこちらを見てぷっと笑う。
あ…いつもの、ユウジだ…。

そう思うとなんだか安心して緊張が和らいだ。


「話しって…?」


「……白石と、付き合うん?」

「……うん。」

「……そっか。」

そういうと、
ユウジは何も言わずに頭上に広がった青空を仰ぐようにして見上げていた。


――なんでユウジは、
今更そんなことをいうのだろう。

本当に今更すぎる。




「……俺な、気付いたんや。」

「……え?」

「今更やな、俺。
 花子のことただの幼馴染や思ってたんに――。
 …小春に言われて、この気持ちが純粋に恋やって分かった。」

「…………。」

「せやけど、叶わん恋やった。
 …悲しかった。
 っていうか、正直今朝目あわせてくれんだのめっちゃ傷ついたわ。」

そういってへらっと笑うユウジ。

――な、んだよ。
なんなんだよ…。


「あーでも気持ち言ったらスッキリしたわ!
 ……幸せになりや、花子。
 俺がいつでも相談にのったるから。」


やめて。



「あ、お前結構アホやから白石に迷惑かけるかもな」


――やめて、ユウジ。



「……白石モテるから、
 ファンには気ぃつけや」


これ以上、私の心をくちゃくちゃにかき混ぜないで――。



「やから、これからも俺の友達でおってな」


ギュッ。

私はどうしようもない衝動にかきたれられて、
思わずユウジを抱きしめてしまった。


――やめて、やめてやめてやめて。

そんなこと言わないで。

友達でいて、なんて切ないこと言わないで。
恋に協力するだなんて、言わないで。

そんな悲しい顔で…言わないで。




「………花子?」

そういって、ユウジが困ったように笑う。


「………遅いよ、ユウジ」


本当に、遅すぎたんだよ、ユウジ。
――私達、後ほんのちょっとのところで…擦れ違ったんだ。



「……ユウジは、ずるいよ…。
 私の心をめちゃめちゃにして……っ」


――いや、ずるいのは私のほうだ。

蔵と付き合っているのにも関わらず、
気持ちはまだユウジに動いているなんて。

――最低だ。




「………花子?」


「………っ、好きだよ……っ」


ユウジのことが。
――誰よりも、大好きなんだ。


…私は卑怯で最低で、軽い女だ。

そう批難されたって何も言い返せない。
でも、この気持ちを止められそうにない。



ガチャッ。

扉が開くと、
そこには――悲しそうに笑う蔵が立っていた。





―――――
★あとがき

白石はある意味重要な役。





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