指をすり抜けていく
「…失恋……か。」
――あほやな、俺。
もうちょい早く告白しとれば、
まだ望みでもあったんかな?
「……いや、白石と花子――。
めっちゃ仲よかったから、俺が入る隙間なんて…最初からなかったんや。」
俺はベッドにダイブすると、
アホみたいに涙を流した。
うぅー、失恋や。
好きや。何で今気付くねん、俺。
……何で、花子のこと諦めれんねんろ。
「……好きでおっても、ええんかな。」
――返事なんて、返ってこない。
……私が目を覚ますと同時に
家のインターホンがなった。
いや、インターホンがなったから私は目を覚ましたのか。
ピンポーン。
ガチャッ。
下でお母さんが誰かとやりとりしている声が聞こえる。
ダダダダダッ!
「花子、あの子誰やの?!」
「……っは?っへ、いきなり、何……?」
「せやから、ぎぎぎぎぎ…銀髪のめっちゃかっこええ子がおるんよ!
玄関に!あんたのお迎えやって…っ!」
銀髪…?
私は半分ぼーっとした頭で下へ降りて行くと、
そこにいた人物に思わず足を止めた。
「おはよう、花子。ってむっちゃ髪の毛ボサボサやん」
「………蔵?」
「――っぷ、なんて顔しとんねん。
はよ準備してきぃ」
そういわれ、
私ははっとした顔になると急いで学校の準備をすることにした。
…洗面台を見て、絶望。
ボサボサな髪の毛に、
疲れきったような顔立ち。
あぁぁああぁ、こんな自分を見られるなんて…。
「(ついてない、私…。)」
.
..
...
「…急にで、びっくりした」
そういうと蔵がニッコリと微笑む。
「ドッキリさせよーおもってな」
――いやもう十分ドッキリしました。
これでもかってぐらい。
「……っていうのは嘘。
ほんまは…花子のことが心配やってん」
「……え?」
「花子――。
ユウジと幼馴染やから、今まで一緒に学校登校しとったやろ?
けど…絶縁状態やったら、
一緒に行く人おらんやん。」
「……蔵、」
「そんなお前を見捨てれるわけないやんっ。
ほら、手繋いでいくで!」
そういうと蔵が私の指に自分の指を絡めた。
まさかの恋人つなぎに、
内心心がばくばくいっている。
「……ありがとね、蔵」
「……いえいえ」
これで…いいのだろうか、私の道は。
これで……。
そう思っていると、
玄関へ着いた瞬間にばったりとユウジと小春のペアにでくわしてしまった。
パチッ。
あ…目が、あった…。けど私はいてもたってもいられなくて下を向いてしまう。
「……花子、いくで」
「ん。」
私は蔵に連れてかれるように、
その場を早足で立ち去った。
――ユウジの視線が自分に絡み付いているようで…何故だか胸が苦しくなった。
「(……なんやねん、その態度。
お前なんか…お前なんか、ハゲてまえばええんにっ)」
悔しそうにユウジは唇を噛み締めた。