「…ほな、ここでさいならやな」

「送ってくれてありがと。
 本当感謝してる」

そういってニッコリ微笑むと、
蔵の王子様スマイルが返ってきた――。

見えない壁


家へ帰って部屋に戻ると、
ベッドにダイブした。

……ユウジ。

『お前なんかもう知らん、絶交や……』
その言葉がしつこく私の心の中で、何度もリピートされる。



ガラッ。

むなしくカーテンを開けてみる。
――ユウジの部屋と繋がっている窓と窓。

向こうの部屋は、カーテンで仕切られていた。

…この窓の向こうには、きっとユウジが…いるんだろうなぁ。
窓にそっと手を置きながらそうおもった。

…会いたい。
謝りたい。

だけど、今のユウジには何をいったって伝わることなどない。

何一つ――。
伝わらない…のだ。


「……ねぇ、ユウジ。
 私…こんな想いするなら、
 蔵と付き合ったほうがいいのかな」


か細い声でそう呟く。

…聞こえるはずがない。
分かっている。

けれど――この手の届かない距離。

見えない壁があることで、
私は何らかの安心感とともに独り言を呟いていた。


「ユウジは…私より小春だもんね。
 私が蔵と付き合ったって、
 きっと何も思わない」

――止めてくれたらどんなに嬉しいことだろうか。


自分馬鹿だなあ。
ユウジは…私のことを、ただの幼馴染としか思っていない。
恋愛対象だと思っていたのは、
自分だけなのだ。


「…ごめんね、ユウジ。
 おやすみ」

そう呟くと、
私は静かにカーテンを閉めた。



…明日は、学校かぁ。
重いなぁ…。


「……早く、寝よう。」

そう思い、私はベッドの上で静かに目を閉じたのだった…。


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