「……もう少し。
 もう少し、考える時間を…下さい。」

そういうと、蔵はニッコリと微笑んだ。

「おん、いくらでも待っとるで」

困惑


…しばらくして、
私が泣きやんだのを見て

蔵は私から手を離した。

「……今日、送ってってもええかな。」

「え…い、いやそこまでしてもらわなくても――「湿布とってきた…わ……よ?」

勢いよく扉を開いてやってきた小春に
私達は言葉を失った。

いくら手を離してくれたとはいえ、
かなりの至近距離…。

あ、小春の眼鏡が今きらって光った。


「あ…お、お邪魔やったか!
 おほほ、じゃあね!」

「え…ちょ、ま――」

そんな言葉も虚しく、
小春は湿布だけを置いていくと風のように去っていく。


……はぁ。
ユウジ、どうしよう。

ただでさえ家も隣同士なのに…。

きまずいなぁ。
謝っても――許してくれないよね。

っていうか、私の意見すら聞いてくれなかったもん…。


「…湿布、はるで」

「あ…う、うん」

蔵は慣れた手つきで私の頬に湿布をはる。


「……かなりはれとるな。」

「……ん。」

「…女相手に平手打ちって、
 あいつ最低やわ……。」

「……ううん、誤解されるようなことした
 私も悪いから」

…だから、ユウジは何一つ悪くない。


「っな」

「ん?」

「花子の好きな人って――」

そこまで言って、
蔵は引きつった笑みを見せてから首を横にふった。

「…ん。やっぱ、なんでもないわ。
 あ、それよりさっきの話しの続きやけど送ってくで」

そういって、話しをそらす蔵。
――なんだか、蔵らしくない。


「…でも、」

「俺が送りたいゆうとるねんから、
 大人しく送ってもらっとき」

「……ありがと。」



そういうと、蔵は部長の仕事を小石川君に任せ
そのまま帰る準備をして素早く部活を出た。

…小石川君、こういう時ばっかり仕事任せられて
なんだか同情してしまう。


「ほな、いくで?花子」

「あ…う、うん!」

私は慌てて蔵の後ろをついていくようにして、隣を歩いた。





――蔵が、私のことを好き…かぁ。

なんだかまるで夢みたいで
本当のこと。

…だけど私の好きな人はユウジで、
そのユウジにはついさっき嫌われてしまった。

…悩み事は、増えていくばかり。



「(蔵と付き合ったら…。
 こんな気持ちにならなくていいのかな)」

もう、ユウジが小春とらぶらぶして
傷つかなくてもいいのかな…?

それだったら、私は。


私は――。



- 7 -


[*前] | [次#]
ページ:




「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -