ガチャッ。
扉が開く音がしたが――私はそちらを振り向くことが、できなかった。

…今、ものすごくみっともない顔してる。

小春にこんな顔見せられない。

「あ…ご、ごめん!
 今ちょっと向こう向いててくれ「はぁ…、はぁ、花子」

そういって、よく知っている声の主が、
私をぎゅっと抱きしめた。

支えてくれる人



「……っ!蔵……?」

何で蔵が?
じゃなくて、私ぎゅっと抱きしめられて――。


「こっち…向いてや」

「………」

「なぁ、花子――…」

そういう蔵の声が優しくて、
思わず嗚咽してしまう。

「……っ、ぅ…っく……」

「……なぁ、何があったん?」

「ゆ…ユウジ、が――」

そういって、蔵に頭を撫でられる。
――暖かくて、大きな手。


「……ひとまず、俺の胸で泣きや。
 それから、いくらでも…聞いたるから」

そんな蔵の優しさに耐え切れず、
私は蔵の腕にしがみついて、赤ん坊のように泣き続けた。

…ユウジと、こんな大喧嘩したの初めてだ。
あんな辛そうな表情をしたユウジを見たのも初めてだ。

――絶交なんていわれて、

私…どうすればいいの?



「…………ごめん。泣きついたり、して。」

「……ん。ええよ、
 それより、どしたん?ほっぺ…」

そういって、蔵が私の右頬を触った瞬間に走る激痛――。

「……っ!」

「あ、す…すまん!大丈夫か?」

「あ…大丈夫、だよ…」

……力いっぱい平手打ちされたなあ。
物凄く怒ってるってこと、なんだよね。



「……私、誤解された」

「……誤解?」

「………小春と、キスしてるって…」

「――はっ?」

そういって、蔵がすっとんきょんな顔をした。
…そうだよね。
普通に考えて、
小春が誰かとキスすることってありえないって思うよね。

けど、その普通が通じないのがユウジなんだよね。


「……あのね、私の口元にチョコレートついてて…。
 それで、小春がとってくれてるときに、ユウジきてさ。

 ――それで、『キスしてたやろ』って。
 違うっていっても、聞いてくれなくて…それで、平手打ちされ…て……」

思い出しただけで、胸が痛くなる。
――辛い。

痛い。

忘れたい。



「……花子」

そう名前を呼ばれた瞬間――。
ぎゅっと、壊れるんじゃないかというほど強く、抱きしめられる。

「い…いた…」

「――なぁ、俺にしぃや」

「……え…?」

「……俺なら、花子を幸せにしたる。
 絶対に、泣かせん」

待て待て待て…!
話しがついていけない…!


「ちょっと、待って!何の話し――「せやから!花子のことが…好き、やねん」

蔵と視線がぱちっとあった。


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