チョコレート事件
「はぁー、疲れた」
今日の朝、
目を覚ませばユウジが同じベッドで寝ていて朝から大声をだして叫んじゃったわけで。
…部活の時間まで、ずっとユウジの寝顔が忘れられなくて
私の胸は今ユウジでいっぱい。
――…そんな時に、事件は部室で起きた。
「あ、花子ちゃん口元にチョコレートついとるで」
「え、マジ?とってくれる?」
「えーいややぁ…!っちゅーのは嘘で、
花子ちゃんの頼みやからと・く・べ・つ★」
そういって、小春が私の口元のチョコレートを取ってくれたのが原因だった。
バタンッ。
物音がしたような気がして、
私は後ろを振り返った。
――そこには、ユウジが呆然と目をぱちぱちさせながら私達を交互に見ている。
…?
あれ、何か様子がおかしい…?
「どうしたの、ユウ「う…うっさい!お前今、小春と…き………き、……」
「き……?」
そういって、首をかしげる。
ユウジはわなわなと肩を震わせて、私をビン!っと指差した。
「キスしとったやろ!」
「……っはぁ?」
何を言い出すんだ、ユウジは。
全く話しが理解できない私に、
小春はその様子を冷静に見ている。
「キスなんてしてないよ!」
「……嘘つけや。
しとったやん、キス」
「だから、してないって――バシッ!………っ!」
右頬に走った衝撃。
――あ、れ。
私…今、ユウジに平手打ちされた……?
「ふざけんなや!
こ…小春たぶらかして、
嘘ついて…!
最低やわ。
お前なんかもう知らん、絶交や……」
そういって、傷ついたような表情をしたユウジが
部室から出て行く。
…いまだに上手く状況がのみこめてない私の肩に、
そっと小春が手を置いた。
「…花子ちゃん大丈夫?
――ちょ、待ってな。保健室まで湿布とりにいってくるから、
ここにおってくれな…」
そういって、部室から出て行く小春。
――勘違い、された?
口元についているチョコレートをとろうとした小春と私が、
ユウジの角度からは――キスしているふうに?
「………っ」
じんっ。
右頬が痛い。
叩かれたところが赤くじんじんしている。
――それよりも、もっと。
………心が、痛い。
『お前なんかもう知らん、絶交や……』
ポロッ。
涙がでてくる。
――昨日まで、あんなに仲良く料理つくって同じベッドで寝て。
私、幸せで幸せで。
うかれすぎてたから…こんなことに、なったのかな。
「………っ、ゆ…じ………っ」
抑えきれない涙。
私は顔を両手で覆って泣いた。
馬鹿なのは自分で、ユウジは悪くない。
――ユウジは、小春のことが大好きだもん。
その小春に手を出したなんて――。
ユウジが怒るに決まっている。
…でも、神様。
………ユウジが私にじゃなくて小春に対して怒ってくれたら――。
どんなに嬉しいことなんだろう。
って思った自分がすくなからず、ここにいたりもした。
「(…私は、やっぱり小春以下だった。)」
そう再度認識してしまって――。
心が、痛い。