グラスの中の海




 驚きよりも何よりも、先ず呆れた。
 古めかしい手動開閉のエレベーターにチップを恭しく受け取ったドアマンが一礼をして吸い込まれ、マルコはホテル支配人の馬鹿丁寧にまで恭しい態度と僅かな戸惑いの意味を正確に理解した。ホテル最上階のワンフロア全てが借り切れるスイートルームは踏みしめる絨毯も海の見えるゴシック調の細工の美しいテラスもシャンデリアもそれこそテーブルと椅子に至るまで磨きあげられてこの部屋の全てが完璧である事を主張していた。陽が昇れば嵌め込まれた厚いガラス越しに遠くの海まで見渡せるのだろう。
 投げ捨てられたスーツの上着とネクタイを辿って行けば、ゴブラン織りの天蓋のかかるベッドの上で鼾をかいている黒髪の少年が当たり前のように居る。ネクタイを弛め、脱いだ上着をその腹の立つ顔にぶつけると、ようやくもぞもぞと体を起こしてスーツで塞がった視界をクリアにして寝ぼけた目を擦る。

「マルコ遅い……待ってたのに寝ちまった」
「なんでこんな部屋とってんだよい」
「んー…?マルコに言われた後さ、街の人に飯が美味くてベッドが広い宿教えてつったらここだって言うから。腹減ってたしもういいかなって思ってさ、そのまま」

 大欠伸をしているエースのシャツは多少食べこぼしが散っていたが、今日は皿に突っ込まずに寝たらしく(寝ていないとはマルコは思ってもいない)普段よりは汚れていない。

「マルコ、飯は食った?」
「…いや」
「じゃ、なんか頼もう。待ってる間風呂入ってくる」

 チェストに乗る伝電虫を指さし、おれも適当に何か頼んでくれよと言い残してエースが何部屋先か知らないバスルームに消えていった。まだ食うのかとか、そこは先に風呂行って来いと気遣うところだろう想定内の呆れを上乗せしつつ、マルコは伝電虫の受話器をあげた。

 秋島であるこの島は、白ひげの領地では無いが友好的かつ有益的で、物資の補給は言わずもがな、海軍の動きを探る情報屋やそれなりの身分を持ちながらも政府を信用しておらず、革命軍などとの繋がりを持つ人間も少なくない。マルコとエースの堅苦しい格好も、会合に際して周囲に違和感をもたれぬようにとの配慮だ。最も開始五分で寝こけたエースを蹴り出して宿を取って大人しくしていろといいつけたのはマルコである。その宿がこんな一般人では手の届かぬスイートルームであるとは夢にも思っていなかったが。支配人のあの態度からすればもうエースは金貨を渡しているに違いない。どこぞの道楽息子が島一番のスイートを借り、さぁどんな着飾った女が来るのかと思っていたところにマルコが現れたのだ。不思議に思うのも仕方がない。刺青はシャツの下で、兄弟にも親子にも見えぬ男二人はさぞかし奇異に写っただろう。


「役立たずでごめんな」
「全くだよい。せめて明日は紹介が終わるまでは起きてろい、これも隊長の仕事だぞい」
「頑張るよ」

 一人分の軽食と、十人分の適当な食事を、というマルコの依頼は正しく理解され、大テーブルに広げられた料理の山は一流ホテルの名に恥じぬ形状と味だったが、エースにその価値は伝わるべくもない。夕食を食べたと言っていたのが冗談のような量をぺろりと平らげ、冷たい白ワインを瓶から直接飲み干したエースがぶはぁ、と満足げに息をついてにやりと笑んだ。魂胆の見え透いたその顔に、もう一度蹴りを入れようかと考えたのを流石にエースもわかったらしく、わざとらしく一歩下がったのにまた腹の虫が居所を変えたがって蠢いた。

「マルコも風呂入れよ」
「食ったらな」
「もう食う気ねぇだろ」

 半分ほど口にして形を変えなくなった高級具材の詰まったピタをマルコの手から奪い、皿に残るものも全て腹に納めてしまったエースが酸味の効いた舌先でマルコの下がった口角を掠めて両手で腕をとる。促されるままに立ち上がったマルコを、自分が誘導したくせに意外そうに見つめるので思わず頭突きをしてしまったマルコが瞬時に後悔した。石頭ではエースにかなわないのだ。

「痛ぇ!」
「おれの方が痛ぇよい」
「だったら大人しくしてくれりゃいいのに」
「今おれはお前を窓からたたき落としたくてたまらねぇよい」
「駄目。約束だろ。反故にすんのはマルコの勝手だけど、おれは我慢しねぇよ?」

 言い返されたマルコが眉根を寄たが、引かれる腕に抵抗を諦めて歩き出すのにエースはぱくりと口を閉じて何か言いかかった台詞を閉じこめる。マルコという男は下手につつき回さなければ驚くほどに諦めが早いのだという事をエースは一年に満たない付き合いで学習していた。無駄に広い脱衣スペースでマルコのシャツのボタンにかけようとしたエースの手をはたき落とし、マルコが潔く衣服を脱ぎ捨てる。バスローブのままのエースが浴室へ先に入るのを追うと、嫌な予感は外れず――予想していたのと実際目の当たりにするのは天と地ほどの差があるものだ――乱雑に置かれた(エースが乱したに違いない)ホテル名の刻印されたアメニティの中にあからさまに場違いな毒々しいラベルのボトル。差し出されたエースの手に叩きつけるように右手を渡し、マルコはこれから始まる出来事への抵抗を全て諦めるようにまた一歩、ぺたりと塗れた床を踏みしめた。


 この世界で、水が溜まっている場所は全て海である。それが山の中の湖でも町中の汚い池でも、厳密に言えばグラスに満たされた水でも。生憎グラスに体を漬けられるほど奇妙な能力は持ち合わせては居ないが、もし出来るのならば、体中から力が抜けてグラスの中で溺れ死んでしまうのだと思う。グラスの中ならぬ大きな浴槽の中で、表情筋を動かすことすらままならぬ倦怠感に包まれながらぼんやりとマルコは高い天井を見上げた。

「気持ちいい?」
「……死にそうに、いいよい」
「だろ?おれ髪洗うの上手いって弟にも褒められた事あるんだぜ」

 皮肉もどうやら通じなかった様子でエースはマルコの潮風と日差しに痛んでごわつく髪を梳き、備え付けのシャンプーを泡立てて指先で丁寧に頭皮の汚れを落として行く。実際にエースの手際は悪くなく、むしろ気を抜けば湯船に沈みこんでしまいそうなほどには心地よかった。「命綱」だと右手首に結ばれたネクタイの端は真鍮の蛇口の根本に括りつけられていて、ゆるやかな傾斜になっている浴槽から頭だけをエースの膝に預け、左手は湯の中に浸かって指一本動かすことの出来ないマルコはたしかにそれが必要な処置だと実感している。この際、エースが自分を浴槽に入れなければ必要は無いのだと言う事実は考えないようにした。
 温めの湯が耳の後ろを泡の感触と共に流れ落ちて行く。首の後ろを支えられたまま目を閉じると、本当に何もかもがどうでもよくなって来た気がした。ふと顔の周囲の空気が動き、ああキスされるなと思ったと同時に唇に柔らかい感触が訪れた。エースとのキスは、大抵まず最初に何らかの食べ物の味がする。抵抗する気はもうないが、舌先で歯の合わせ目を開かれるのにも抗えない自分の体の弱々しさは、少しだけ、怖いと思った。その気持ちに気がついているはずもないエースの動きは、船上での性急で荒々しいものとは似つかぬ緩やかなもので、柔らかい咥内の粘膜の感触を確かめるように味わうエースの顔を見ないように殊更瞼に力を込めた。それが気に入らないエースがすぐに目を開ける様に要求するのはわかってはいたが、初めからそれに倣うには少々マルコは年を重ねすぎていた。

「マルコ、目ぇ閉じないでくれ」

 いつもと同じ様で違うエースの懇願に、僅かに躊躇ったマルコの左胸に鈍い痛みが走った。

「……っ」
「目、あけててよ」

 乱暴に捻り潰された乳首が解放され、体を折ってそこに舌を這わせるエースと真正面から目線が合った。赤くなった薄い皮膚をねっとりと舐めあげ、固く尖った粒の先端を力を込めた舌先で弾き、音を立てて吸いつく。エースの目線に杭を打ち込まれたようにマルコはその光景から目が離せない。黒い瞳が自分の一つ一つの動作に返るマルコの反応を確かめている。力なく沈む体に、馴染みのある熱が駆け巡るのを自覚せずにはいられなかった。

 この上陸に際し、エースの好きにして良いと言い出したのはマルコだ。最初に体を繋げて以来、エースは事あるごとにマルコを求める。酔狂な事だと思えど、そうであるならばエースを誘った自分はもっと気狂いなのだろうと思う。自分の年齢の半分に満たないこの若者が、単に欲の為だけに自分を求めているとはマルコは思っていない。静まった船の上で、世界から隔離されたようなマルコの部屋で、時折呼吸をやめてしまうのではないかと疑うほどの必死さでエースはマルコを抱く。邪険にしようが蹴り飛ばそうが、最後にマルコはエースを許してしまうということを、エースは本能的に知っているのだろう。
 おそろしいことだ。他人事のように、マルコは湯の中からすくい上げられた脚の間に揺れる、形を成し始めた自分の性器を腑抜けた表情で目にした。一時的にこの体を好きに貪って良いという代わりに、船上での安寧をエースに約束させたのだ。安寧、という言葉の薄ら寒さにマルコはゆるりと口角をあげようとした。

「……ぁっ…!」

 倦怠感に一時的に意識を飛ばしていたと気づいたのは、内臓をこじ開ける異物の冷たさに声を上げてからだった。丸く、何か滑りのある冷たいものがエースの指によって奥に押し込まれ、指を残したまま体を再び湯の中に沈められた。緩やかに動くエースの指の隙間から内臓よりも高い温度の湯が入り込み、中から溶けだしているらしい何かと混じってエースの指に絡みつく。すぐに二本に増やされた長い指は関節を折り曲げてマルコの中を探り、前立腺の場所を避けたその周囲をほぐすように動き始めた。

「エー、ス」
「単なるジェルだよ。体温で溶けるんだって」

 言葉の合間にも球体状の固形物から潤滑ジェルが溶け出すのをかき出す動きを繰り返し、それと入れ替わるように新たな湯が体内に入り込む。快楽の源泉を避けられるもどかしさに腰を揺らすイメージが頭に浮かんだが、実際に動いたのはネクタイの巻き付いた右の指先だけで、責めるようにエースを見ても視界にあるのはエースの黒髪から覗く耳の裏ばかりだった。こちらを見ろ、と自分は強要するくせに。体の自由が効かないもどかしさに、ふつりと腹の底に押し込めようとしても叶わない強い感情が沸き上がる。今、体の自由がなくて良かった。マルコは真逆の事を同時に思う。その思いを口にする事は、やはりおそろしい事だと。
 指を引き抜かれて上体を引き上げられ、浴槽の縁に縋るようにして尻をエースの前に晒す体勢にされた。ほんの小さな粒になったジェルが内圧でとろりとこぼれ落ちる感覚にマルコの体が小さく跳ねた。体温の関係で肌を伝う湯は冷たく感じ、それをエースに目の前で見られているということはマルコに酷く羞恥を覚えさせた。もう幾度もエースには見られ暴かれた場所であれど、こんなにも無防備に体を預けたことはない。

「っ!!……エース、それ、嫌だって……」

 不意に訪れた感触に、マルコの拘束された右手がネクタイを握りしめた。湯と潤滑剤にほぐれた場所を両の親指で開き、赤い粘膜の中にエースの舌が這う。入口の襞をひとつひとつ辿り、また尖らせた舌がぐにゅりと内部に差し込まれた。指よりも短いその部位はマルコの啼き所には届くはずもない。けれど、エースの柔らかな舌が顔の動きと共に出入りし、会陰から周囲の皮膚を舐め回されていると想像するだけで息があがった。実際に握り込まれたマルコの性器はエースの手の中で弾けてしまいそうな程に張りつめている。

「……マルコの嘘つき。本当は好きなんじゃねーか、舐められるの」

 ざぶりと波打った浴槽から湯が溢れ、完全に弛緩したマルコの体を床に下ろしたエースが潤滑剤と唾液と湯の境目を無くして光る唇を赤い舌で二度、舐めた。右手を拘束されているマルコの体はどちらにも倒れることが出来ず、エースの脚の間で顎を支えられてエースを見上げた。排泄孔であるそこを舐められるのは本当は虫酸が走るほど嫌いだ、とはもう信じてはくれないだろう。船上でも陸の宿でも、マルコはエースがそこに唇と舌で触れることをもう何度も拒絶していたのに。
 バスローブの合わせ目から、角度を持ったエースの性器がマルコの口元に寄せられた。脱力した口が上手く開かず、顎を掴んだエースの指が歯を押さえてこじ開けて性器を捩じ込む。ぬるりと舌の上を滑り、喉奥へ無遠慮に押し込まれた質量の苦しさに眉根を寄せる行為ですら難題な状態のマルコの瞳にうっすらと涙が浮かんだ。舌を動かす余裕も無いマルコの頬と顎を押さえたエースが腰を揺らし始め、マルコが楽な角度に動こうと身じろぐのを無視して射精へと昇る速度で喉奥に打ちつける。固く張りつめて質量を増したエースのものから滲む青臭いエースの匂いが咥内から鼻へと抜けてマルコの感覚をも犯す。マルコの喉の粘膜に叩きつけながらエースが腰を引き、唇から引き抜かれた性器の先端から断続的に飛び散る精液が口の中にも閉じられなかった瞳の横にも降り懸かる。苦しさを逃すために咳き込みたいという体の要求は受理されず、マルコはかわりに、咥内に残った精液を舌先に乗せてこくりと飲み込んだ。ひゅ、と息を飲む音がマルコの頭上から聞こえた。目の前の角度を持ったまま少しうなだれたエースの濡れた先端に、ゆっくりと体を倒して舌を這わせる。倒したというよりも、エースの股間に顔をぶつけたという状況が正しい。支えてくれると思ったから、そうした。実際にエースはマルコの肩を支えたし、エースの性器を舌で愛するのは嫌いではなかったから。柔らかな先端部分を口に含み、尿道に残る残滓を吸い上げ、割れ目に残るものも舌を差し入れて掬いとり唾液と共に燕下すると、唇に触れたままの性器と肩を支える手が同時に反応して、神経の通い始めたマルコの頬の筋肉が勝手に緩む。

「……笑うな」

 鈍い音が頭に反響し、遅れて痛みが届いた。エースに突き飛ばされ、浴槽に体を打ちつけていたのだ。胡乱だったマルコの表情にようやく芯が出来、深い海の色をした瞳が丸く見開かれてエースを見上げた。

「おれは、エース」

 乱暴に体を返され、マルコは続く言葉を紡げない。浴槽の縁に胸を押しつけられ、左手が湯の中に落下した。顔の目前に迫る湯から逃れるべく右手を引いたが、エースに腰を捉えられてそれ以上ちいさな海である湯船から動けない。尻の合間に冷たいものが降り懸かり、あの毒々しいボトルの中身だとわかってもマルコは続く衝撃に身構えることしか出来なかった。
 エースが不完全だった性器を擦りあげている水音がして、そんな事をしなくてももっと舐めてやったのにと思うに至って自分が未だ思考が海の魔力に支配されているのだとマルコは気がつく。

「は、っあ、うぁ…」

 閉じ切れぬ唇から、獣のように涎を垂らしながらエースを受け入れ、内部が馴染むのを待たずに動き出したエースの性器がだんだんと質量を増して行く。一番具合の良い大きさを、マルコはすっかり覚えてしまっている。だから、お前がそんな顔をする理由等無いのだ。口が利けても、マルコがそれを伝えたかはわからない。けれど、こんな事をされても既にエースを全て受け入れてしまって居ることを、エースに思い知らせてやりたいと唯一力の入る右手を握りしめた。
 一度も射精していないマルコの頂が迫っていた。床についている膝は既に脱力していて、エースが支えていなければ崩れ落ちてしまうだろう。擦れた膝は、血が滲んで居るに違いなかった。揺さぶられることで水面に落ちた左手が揺れ、波がマルコの呼吸の邪魔をする。圧迫された肺にせめて空気を入れたいともがいたところで、全ての視界が閉ざされた。
 海だ。
 指先一つも動かせないまま、ゆっくりと体が飲み込まれて行く。ごぽりと大きな空気の泡が耳の横を舐めて水上へと浮上する。体は何一つ動かせないのに、視界と意識だけは驚くほどに澄んで明確で、水面から覗く太陽が小さくなる光景がフラッシュバックした。二十歳にも満たなかったあの時の自分を助けたのは誰だったか。引き上げられた後、しこたまサッチに馬鹿にされたというくだらない事だけはよく覚えているのに。

「……ぐはっ!はぁ、あっ、ああ、ぇあっ」

 突如開けた視界に体中が失った酸素を求めて喘ぎ、ここが海などではなく、柔らかい照明に照らされた浴室であることを思い出す。くわえ込んだエースの性器が身動きすら出来ぬほど締め付けられ、小さく呻いたエースがマルコの内部に射精したとほぼ同時に、マルコの触れられてもいない場所から浴槽へ激しく飛沫が飛び散った。痙攣がおさまらぬ体から性器が抜け、そのまま裏返されるとマルコの呼吸を邪魔するようにエースがその唇を塞いだ。苦しさにもがけばもがくほど体を強く拘束され、マルコはエースの唇との隙間から空気を求めて涙をこぼした。

「殺す、気か」
「マルコ」

 まるで返答にならぬ名を、縋るように呟いてエースはマルコの体を抱きしめた。邪魔だ、と思う。身じろぐのも億劫で、エースの頭にこめかみをぶつけて顎をしゃくると、鼻を啜ったエースがマルコの右手の拘束を解いた。せき止められていた血液が流れて擦れた手首が痛み、このまま立ち上がれぬほどにエースを殴りつけたいとも思うが、今は違う欲求が先に立ってしまっていた。
 おそろしいことだ。頭の中だけで嘯いて、エースの背に手をまわす。鍛えられた厚い背筋が、マルコの一挙手一投足に緊張するのは、こんなにも苦しいのに、こんなにもおそろしいのに。

「おれが、一度だってお前を、あざ笑った事が、あるかよい」

 苦しげなマルコの声に、ううん、とエースが首を振る。その子供のような所作を愛しいと思う。過剰に求められて辟易しても、己の在処を見失って愚かに悩み躊躇う姿を見せられても、とどのつまりは、エースであればいいのだと言うことをこの若者は知らないし、これからも知らなくていいのだ。グラスに閉じ込められた海の中から無様に光に手を伸ばすのは己だけで、エースは笑ってグラスの外側から手を差し伸べてくれればいい。
 冷たくなった床に、エースの体液がどろりと内臓から溢れ出す。身震いするような感覚に、マルコの手にようやく戻り始めた力が込められた。そっと体を離したエースが、今になってようやく壊れものに触れるかのようにマルコの頬を包み、塩分を含んで濡れた唇に己の唇をそっとあわせた。
 それは、マルコが思わず笑ってしまうような、幼く可愛らしい口づけだった。













2010/10/21


後日エースは、迎えにきた小舟から命綱をつけられて海に落とされます。そのままモビーまで連行。
マルコ、許してますけど、怒ってないとは言ってない。(矛盾)
スイートである意味が全く無くなったのでいつかまたリベンジを。
スーツが書きたかっただけという、ね







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