Kiss me




 閉め切った部屋には噎せ返るような若い雄の臭いが立ちこめていた。息を整えようとしても、混じりあう汗の匂いに肺の中が熱くて、苦しい。
 マルコの肩をシーツに縫いつけるようにして掴んだエースは、ぽたりぽたりと滴る汗を拭いもせず、それはマルコ胸の中央を滑り、鳩尾の窪みに僅かに滞ってはマルコ自身の汗と混じり脇腹を流れ落ちていった。
「マルコ、キスして」
「……好きにしろ」
「キスされたい」
 マルコの中でゆるやかに硬度を失う性器が、まだ出たくないとでも言いたげに揺すられた。それを蹴り飛ばして諫める手間を思い、マルコは腰に負担をかけぬように後ろ手をついて、エースの唇へと己の唇をぶつけた。舌を絡めるには少々体勢が悪く、それはマルコのせいではないので文句を言われる筋合いはない。
どさりとシーツに背を落としたマルコを追って、エースが脚を抱え上げたまま顔を寄せる。最初からそうすればいいのにと、舌の根まで貪られながらマルコは苦しさに眉根を寄せた。エースの舌は、己の精の臭いがする。
「もう一回だけ、いいよな?」
 内臓を圧迫し始めたエースの質量に、マルコが目を閉じる事で了承を示したことで、エースの体臭が一層強く立ちこめる。こんな時のエースは、普段見せぬ雄の顔をしている。目を閉じたとて、その表情はマルコの瞼の裏にくっきりと映っていた。
「マルコ、目ぇ閉じるのナシ」
 エースはそれを厭い、いつも軽く頬を叩いたり、瞼にキスをして、時にはそのまま無理矢理唇で挟んで瞼をこじ開けたりしてくる。
 予想した表情が目に飛び込んで、マルコは用意していたかのように眉間に皺を寄せて「するならとっとと終わらせろい」と毒づいた。
 早まる鼓動は、即座に動き始めた我慢の利かない若者のせいだ。
 そう、思いたい。
 

2011/06/11

エースにキュンするマルコについて誰か24時間くらい語らせてください(すごい迷惑)

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