セルフィッシュ




 ああ、面倒臭ぇ。
 うんざりとした様子で瞼を閉じたマルコに、「駄目」と黒髪の悪童が如何にもマルコが悪い事をしたという具合に批難する。逃げたいのは山々だが、この場所が海のど真ん中というのが問題だ。エースはマルコが諦めるまで決して諦めない。
 何度目かのため息を押し殺し、マルコの両足を跨いで膝立ちになっているエースの股間に目を落とした。だらしなく太股にひっかかったハーフパンツの中から激しく自己主張していたペニスを握り、すぐにでも弾けそうな角度のそれをエースはただ出すだけの目的で擦り上げ、既に先端からは透明な体液が溢れてエースの指を光らせている。
「……っあ、いく。見ててよ、マルコ」
 形よく張り出したカリ首がエースの手の中で形を変え、エースがふるりと背中を震わせたと同時に勢いよく大量の精液がエースの掌から指の隙間を伝ってマルコの腿の上に敷かれたタオルの上にぽたりぽたりと染みを作って行く。部屋に立ちこめる精の臭いに、マルコは眉を寄せた。嫌悪ではなく、己の阿呆さ加減に。
 抱かせろとしつこく迫るエースを追い払うのに「てめぇで抜いてこい」と言った筈がいつの間にかエースの中で勝手に「抜いたら抱かれてやってもいいかもしれない」にすり替わり、マルコの機嫌を損ね始めたのに気がついたエースが「二回抜いたら抱いていい?」と懇願を始め、面倒になったマルコがうっかりした生返事を全力で曲解したエースが「だったらここで」と即座にベルトを緩めたのが数分前である。自分の部屋へ行けと言えども「だっておれの部屋戻ったらマルコ逃げる気だろう」と行動を読まれているマルコに逃げ場は最早無く、今汚れるか後で汚れるかの違いしか無いシーツの上に靴も脱がぬまま座らされ、今に至る。
「……っは、流石に連続は一人じゃ辛ぇかも」
 角度を失いつつあるペニスを扱きながら見下ろされ、だったら諦めろと口を開く前にエースの顔が鼻先が触れるほどに寄せられてマルコは思わず顎を引いた。
「触るんじゃねぇよい」
「うん、触らねぇから、じっとしてて」
 今にも舌打ちをしそうなマルコにニヤリと歯を見せて、エースが薄い唇を舌先で湿らせた。薄く汗の滲む額と僅かに潤む黒瞳は、最中に己を見下ろす必死な表情にも似ていて、マルコはじわりと腰の奥が疼くような感覚を覚えた。
「ちょっと、わけてね」
 そう告げて、鼻先をマルコの首筋から胸へと辿らせながらゆっくりと息を吸い込むエースに、今度こそマルコは投げ出していた手でシーツを握りしめた。わけて、とはマルコの匂いという意味だったらしい。犬のように匂いを嗅がれ、肌に当たる息が妙に擽ったい。
「……やる気出てきた?」
「……うるせぇよい」
 エースに与えられる快感を、エースのやり方を、マルコはこの数ヶ月で嫌と言うほど覚えさせられている。マルコの体臭をオカズに、エースのペニスが再び硬度を取り戻した事は、ぐちゃぐちゃと響く水音で見ずともわかる。その張り出した柔らかい段差や、舌触りのよいなめらかな裏筋をエースが己で慰めていると思うと、舌の付け根から大量の唾液が溢れてくるのがわかった。
 エースの呼吸が早まり、手を動かすスピードが増して行く。肌蹴た胸の上を移動するエースの熱い呼気が乳首の上に降りかかり、そこがぎゅうっと硬く凝った。マルコの目元がどんどん赤らんで行くのにエースはさも嬉しげに微笑んだ。
「また、いく……!マルコ、キスしてぇ…な、だめか?約束破り?」
 濡れた唇から覗く赤い舌に、駄目だと思うのに引き寄せられる。僅かに上げられたマルコの顎を、エースは精液にまみれた手で掴み寄せた。即座に差し込まれたエースの舌をマルコは吸い上げ、溢れた唾液を絡めてエースの薄い唇の感触を味わう。口の中でエースが呻き、とうとう二度目の吐精が果たされた。雄の臭いが部屋の中を濃く浸食して、マルコの頭の中を陶然とさせる。ああ、本当に、阿呆だ。
 エースが許可を求めてくる前に、マルコはたまらず汗にまみれた背を抱き寄せた。





2011/07/21



だって今日は0721の日だって言うから……!
ノリで書いたオナネタでした!マルコじゃなくてすいませんw

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