「燿、…ちゃ…ん……?」と…微かに聞こえた声に燿次郎はばっ…!と視線をそちらへ向けた。そこには目を見開いたファイが立っていた。
燿次郎は急いでファイの傍に駆け寄ろうとするが、燿次郎が踏み出す前に…ずさぁぁぁあああ…ッと顔面から盛大に転んだ。その場にいた誰もが驚きで言葉を失う。
誰がこんな事態を予測しただろうか?しかも、その場にいたツッコミ担当の師弟コンビ。ファイとハヤトは心の中でこう叫んだだろう。
「「(ソフィアァァァァァ!!!!!何やってんのぉぉぉぉおおおおお!!!!!)」」
フフ…皆さんのご察しの通り私は彼が踏み出す瞬間に足を伸ばし彼の足を引っ掛けた。わざと?えぇ…そうですよ。
だって、燿次郎さんがこのままファイの元へ駆け寄れば…きっとファイは怯えてしまう。ファイの心は更に傷を負うことになる。すると、燿次郎さんも傷付くでしょうね。
ならば…憎まれ役を買って出るのも一興だと思いませんか?そっとファイの元へ足を進め、目の前で止まる。一度「ファイ」と呼ぶと……ファイは悲痛な声で私に叫ぶ。
「ソフィア…!なんで、燿ちゃんが…此処にいんだよ!!」
「ねぇ、ファイ…」
「…俺は、…俺は……!!」
「ファイ」と、泣きそうな表情のファイの顔に手を持って行き…背伸びしてコツンと額と額を合わせた。
驚くファイに私は何度も「大丈夫よ」と笑みを向け、手袋をした手を取る。
ぎゅっ…と握りファイを落ち着かせ、そして私は…………
「どうか、貴女が幸せでありますように」
私はファイの掌に口付けた。ファイはこの行為に顔を真っ赤にさせた。
忠誠を誓うと言う意味で手の甲への一般的に知られているだろうが…掌への口付けはあまり知られていない。
意味は、懇願。幸せを望む…と言う意味で、初めて言われたその言葉は酷くファイの心を満たした。幸せに、……なれって……?
この言葉に泣きそうだった目は、大きく見開かれ「馬鹿ソフィア……ッ」と一言。そして、いつもの笑顔で…「Grazie」と。ファイは燿次郎の元へ向かう。
その背に手を振りながら、笑う。さて…後は二人の問題、これ以上は口出し無用です。
この和解話は後日談にて語らせていただきましょう。
和解した後のファイの顔は、私が今まで見たことの無いくらい……綺麗で、優しいものだった。
さて、ここからがこの話の落ち。
先程の私の行為によって引き起こされた悲劇、いえ…喜劇といいましょうか。
「ソフィア!!」
「はい?」
「なんか、色々迷惑かけたな!」
「別に構いませんよ」
「それにしても、ソフィアのデレ方に本気で俺びっくりした。」
デレ?という視線を送れば…なにやらファイの変なツボに入ったらしく思いっきり抱き着かれ…しかも、何故か頬擦りされて……え?
なんだか、顔の距離が近いんですが?え?え??…ちゅっと可愛らしいリップ音の後ファイがにやりと笑う。
「俺からのお返し!」
「あら……」
「「おいコラ!!!ファイ(師匠)何してんだ!!!」」
苦労人の二人がファイを引き剥がしに掛かる前に、その場に冷気が立ち込める。
夏だと言うのにこの冷気は一体?ゆっくりと冷気の元を辿れば、そこには般若がいた。
「ファイ……貴様…ぁッ…!!!」と言う声と共にマシロの足元から深い藍色の氷が発生する。
そして、次の瞬間…ここら一帯は夏なのに雹が鉄砲玉のように勢い良く降ったそうだ。
「今日は星が良く見えそうね」
「この状況で暢気過ぎるろおおおぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおッッッッ!!!!!!!」
「うわッ…!なんだこの雹…貫通力可笑しいだろがぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!!」
追伸、君の幸せを願っています
(ファイィィィィィィッッッ……!!!!!!!貴様ぁぁぁぁああああああああっっっ!!!!)
(キスくらい挨拶だろ?なんだ、マシロ羨ましいのか??)
(そんなわけあるかぁあああ!!!!貴様なんぞ、今すぐ縊ってやるぞゴラァァァァッ!!!)
(マシロさんブチ切れたッ!!)
(別に気にしなくて良いのに)
(いや、俺もあの女の気持ち分からんでもない)
(私がファイに口付けたの気に入らないかったですか?)
(あぁ)
(なら、貴方もすれば良いじゃないの)
(出来たら苦労しんわ)
((燿次郎さんも苦労してるな))
((本当にへタレね、女顔なのに…シヅルとは正反対ね))
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⇒あとがき
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