少女の訃報を聞いたのは、三日後です。私は彼女の亡骸に逢いに行きました。
傷だらけで血塗れでずぶ濡れで、あんなに温かかった身体は酷く冷たかったです。
亡骸でした。亡くなってしまった、無くなってしまった。
少 女 は
鳴 雛 ヒ カ リ は
こ の 世 界 か ら
消 え て し ま っ た
そう思うと泣きたいとも思いました、だけども…私は泣けないんです。
すると、次にヒカリの最後の言葉を思い出しました。
ヒカリは言ったんですよ。
” またね ”
それは私の最も嫌う言葉だった。私が今まで”また”と言った約束は必ずと言って良いほど果たされたことはなかったからだ。
だけども、ヒカリは私と別れる際には…毎回その言葉を言ってくれた。純粋に嬉しかったんでしょうね。
別れる度にその言葉が聞けることに…。だけども、最後の”またね”は果たされることはなかった。
あぁ…だから、この言葉が嫌いなんですよ。
それから半日後に大名殿に呼び出され、彼らにこの感情の捌け口になってもらったんです。つまりは八つ当たりですね。
あ…でも、彼らの発言に苛立ちも怒りも覚えたのは事実ですよ。
本当に殺してしまいたいほど憎かった。私は彼女の死について、何かを言うつもりはない…。例え、ハヤト以外に殺されていてもだ。
だから、第三者である彼らがそれをどうこう言うことは私は気に入らないし。人の死を貶すことは私にとっては許せる行為ではなかった。
それだけの話。
それから暫くして、マシロの後を継ぐ暗部総隊長にハヤトが任命されたことを知りました。
勿論国の一端を担う者ですので、その情報は直ぐに来ましたよ。そして、うちはハヤトという人間を書面上で知りました。
アカデミーの頃は神童や天才児など言われ、その後は第一班に所属この班は後に歴代最強と呼ばれ同時に生華隊となる。
うちはハヤト、鳴雛ヒカリ、仁哀トウキのメンバー…。そして、その三人を見守る鳴雛チトセ。酷く懐かしいと思いましたよ。
ヒカリの名前を聞くこと自体なくなりましたし……。チトセだけでしょうか、私の前でヒカリの名を言ってくれたのは…。
貴女がナルト達の護衛任務にあたることになって、少しした頃でしたね。私達の邂逅は。
「最初に出逢った時は、この子があのうちはハヤト…と思いました。
ヒカリが守った少女、ヒカリに生きたいと願わせた少女。
だから、助けました。気まぐれ…?えぇ…そうです。気まぐれなんです。
ヒカリは確かに私にもとっても光でしたが、その光はもう…消えてしまったんです。居なくなってしまったんです。
ですから、ヒカリの事を抜いても…貴女は私の気まぐれで助けた…と言う事になりますね。まぁ…助けたなんて大それたこと言うつもりもありませんけど…。
だから、あの言葉は私にとって衝撃でしたよ。貴女は…私に”また”と言ったとき…正直、ヒカリの面影が重なりました。
嬉しかったです。ヒカリに再び逢えたことに……。それから、何度か交流を交わしていく内に思い知らされてしまったんですよ。
あぁ…そうか、この子はヒカリに似てるんだって…でも、それだけ。それで終わりなんです。
ハヤトにヒカリの面影があっても、…ハヤトはハヤトで…ヒカリではないことに、無性に泣きたくなりました。
消えたくなりました。居なくなりたいと思いました。でもね、気付いてしまったんです。
ヒカリはもう、この世界にはいない…と。でも、ヒカリはハヤトの中で生きていると…
そう思うと心残りは増えちゃいましてね。
まだ、消えることも居なくなることも出来ないと理解したんです」
と、これが私がヒカリの死について泣かない理由の全てです。
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