気付いたときには、ソフィアを池の中から引き摺り出していた。思いっきり木の幹に叩き付けた。両端を塞ぎ、逃げられないようにする。
すると、…ソフィアと視線が合い俺はそのまま………「嘘吐き」と言った。
「知ってます」
「本当は泣けるだろ」
「さぁ」
「泣けよ」
「嫌と言ったら」
「泣かす」
「出来るの?」
「やるさ」
とは、言ったものの…俺は人を泣かせたことがない。だから、どうやって泣かそうか…迷う。言葉でソフィアに勝てるわけはないし実力ならどうか分からない。
出来れば戦いなんてしたくはない…だから、どうにかしてソフィアには泣いて欲しい思っている。ヒカリの為に泣いて欲しいと…思っているから。
俺は………。
「どうして、貴女が泣くの……?」
「はぁ…?」
ソフィアの言葉で俺は泣いていることに気付いた。目元に薄い膜が張り、その膜が破れ零れる。ボロボロ…と流れたしたそれは、涙。
溢れてくる雫を止める手段は俺にはない。どうして、こんなに苦しいんだよ。苦しいのはソフィアの筈なのに…。
なんで、俺が泣いてるんだよ。俺じゃなくて、泣くのはソフィアだろ?泣けよ…。あぁ…もう、わけ分かんね。
裾で目元を擦ろうとすればソフィアはそっと、俺の腕を掴んで冷たいその指で俺の涙を拭っていく。
その酷く優しい仕草に、更に涙が出てきた。冷たい指は俺の目元を優しく撫でる。ボロボロ…ボロボロと…流れるそれを何度も撫でる。
「ハヤト、…泣かないでください……」
「煩い…泣いてなん、か…」
「 」
「え………?」
聞き取れないほど小さな声、だけども…確かに聞こえたその声はこう言った。
「…………その台詞…前にも聞いた…」と言った。
prev next