「ヒカリは俺が殺した」
目の前にいる人物の背に向かって投げた言葉…ぴたり、と止まった足に俺はきつく拳を握った。そして、そっと…こちらに振り向いてソフィアは一言「そう…」と。
俺は俯いていた顔を上げた、何故か視界が歪みソフィアの顔が良く見えない…だけども、ソフィアの雰囲気はいつもと同じだった。
…彼女にとって鳴雛ヒカリと言う人物のそれほどの大切な人間ではなかったのか?ヒカリは、ソフィアを…好きだったのに!そう思うと無意識のうちに手が出ていた。
ぱちんっ…と森に響く音は俺がソフィアの頬を叩いた音だ、息が乱れ俺はソフィアを睨んだ。ソフィアの表情は見えない、長い前髪がその目元を隠しているからだ。
俺はこの場に耐え切れず、走り出した…いや…逃げ出したのだ。
その後ろで、ソフィアが俺にどんな目を向けていたか俺は知らない。
「それで?喧嘩して何日目なの??」
「三日ほど…ソフィアとは連絡をとっていない。てか、基本的に連絡手段がない」
「森の中だし、こちらが向かうかあちらが出向くしか方法ないしね」
カカシはずずっ…とお茶を飲む。注文した団子は普段ならぺろり…と食べてしまうのだが、食欲がない。食べたくないし、何もしたくない……。
はぁ…と溜め息を吐けば、カカシが苦笑した。ムカつく、なんかムカつくけど……今はカカシに殴る気力さえも湧かなかった。
一時の感情で俺は大切な友人に手を上げてしまったこと…ソフィアは俺と同じように強がるのが得意で、感情的になることもない。
隠そうと思えば人一倍隠すのは上手く、それを暴こうとすれば逆にこちらを暴かれてしまう…難しい人だった…。だから、感情的になった俺のが悪い。
だけども…俺はソフィアに……。
「泣いて欲しかった………」
「ほう、お前に加虐思考があるとは驚きだな。で相手は誰だ?」
……………。
「「!?!」」
「そんなに驚くことでもないだろ」
「「いやいや、普通に驚くだろ(でしょ)!!?」」
俺の背後に立ちさも当然のように俺の頼んだ団子を食べる、マシロ。昔はカカシのように綺麗な白銀の髪をしていたが今は烏羽色の艶のある髪ををしていた。
昔の白銀も綺麗だったが、今の彼女にはその色がとても似合っていると思う。
「てか、いつ帰ってきたわけ?」
「今さっきだ。まぁ…直ぐに行くがな」
「そっか。」
「あぁ」
二人の会話はそこで終了した。全くなんともあっさりした兄妹だ、うちなんて昼ドラ並にどろどろしt((ません
とにかく、兄と弟からの愛が重い。それに比べれば、…この二人は随分と淡白な気がするが…それでも理解しあってるのだろう。
「なぁ、マシロ……一つ聞きたいん 痛だだだだだだだだだぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!
頬抓るな…!!痛い痛い痛い痛い痛いっっっ……!!!!」
「マシロさんだ。年上にはさん付けが基本だ、イタチ妹。てか…俺はお前にとっては先輩だろ敬え」
「後輩の頬を思いっきり抓る時点で敬う以前の問題だ!!!」
「俺に口答えするのか?」
「横暴だ!!!」
「はっ!…なんとでも言え!!」
「マシロ止めてあげて!!!ハヤトの頬が伸びきっちゃう!!!」
カカシの発言にマシロさんは凄い嫌々ながら、俺の頬から指を離した。凄い痛い…、てか…絶対に紅くなってるし…!!そして、この人は師匠並のドSだと思った。
そう思いながらも自分も彼女に対しての礼儀を忘れていた。彼女は俺の前任の暗部総隊長を勤めた人だ。彼女の言うと通り敬うべき相手であること。
彼女の異名は…彼女が忍を止めてもなお広く知れ渡り…、認知度も実力もマシロさんが上だ。悔しいが今の俺でも多分勝てない。そのくらいこの人は強い。
だが、そんな彼女が忍を止めた理由は誰も知らないのだ。
「ハヤト」
「はい…?…むぐっ…!!?」
「テメェのしょぼんでる顔なんて気持ち悪いんだよ」
突然名前を呼ばれ俺は反応が遅れた。マシロさんは俺の口の中になんの躊躇いもなく団子を突っ込んできた。口内に広がる甘みは憂鬱な気分を少しは楽にさせる。
だが、突っ込むのは止めてくれ!!!
カカシは俺の背を擦りながら「ハヤト大丈夫!!?お茶…飲んで!!!」とか横で言っている。そんな姿を見てマシロさんは笑っていた。
その姿は…ソフィアに似ていた。
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