遊「と、言うかさ……春さん」

雪那「あ?」

遊「春さんさっき、ミルキちゃんのお風呂覗いたんだってぇ?」

雪那「不可抗力だ!!」

遊「そのわりには、顔真っ赤にして…逃げていったよねぇ…。これだから、童貞野朗は嫌いなんだ」

雪那「お前どんなけオレのこと嫌いなわけ!?!?」

遊「んーとねぇ……、月とスッポンくらい?」

雪那「上等だ!!表出ろゴラァッ!!!」







ミルキ「結局あの人は、雪なの?春なの?どっちなの??」

一華「あの子は春川 雪那(はるかわ ゆきな)って…子でね。遊とは犬猿の仲だよ。

まぁ…でも、どちらかと言うと猫と犬みたいな」

ミルキ「あぁ………」






彼方「本当は遊君が一方的に嫌ってるんだけど」

一華「姉離れできない、弟の複雑な心情ってやつだからね」

ミルキ「どういうことですか?」

彼方「唯、僕と一緒に飲み物の準備しましょ!」

唯「…うん、分かった」

彼方「よし、行きましょ!」






彼方さんは唯をキッチンに連れ席を立つ、この場には私と一華さんのみが残り…庭からは雪が降っているというのに二人の元気な声が響く。

とりあえず、何故二人をこの場から外したのかと聞けば……。





一華「正直に言うとね。遊が雪君を嫌ってる理由はね。彼が唯を好きだからだよ」

ミルキ「…?私も唯のこと好きですけど…」

一華「それは恋愛感情?」

ミルキ「友情的感情、だと…思いますが」

一華「俺達ってさ、裏の人間でしょ。だから、光に住む人たちが羨ましくて憎らしいんだよ

なんであんなに笑っていられるのとか、自分は汚いのに…あの子は綺麗だとか……。何も知らないのにのうのうと生きてだとか…。

まぁ…言っちまえば嫉妬だね。光と闇があるように、物事には裏と表がある。遊は雪君が唯を好きになったのは、雪君が一般人で唯の闇の部分に引かれたから。

もしも、二人がくっつけば…その闇の部分に触れてしまうことになる。知ってしまえば、触れてしまえば…元には戻れない。

なばら…そうならないようにするのが自分の役目だと遊は思ってる。誰も傷付かない、関係を遊は保ってるんだよ」

ミルキ「でも、それって……悲しいですよね…」







ぽつりと…零した言葉、続ける。「遊も唯も、雪那さんも……誰も傷付きはしないけど…、やっぱり…それ以上を求めるのが人ではないでしょうか…?」

自分は何を言っているのだろう、記憶が戻ってから…私は…少し可笑しい気がする。前とは違う…。考え方だろうか、感じ方だろうか、なんだろう…。

いや、違う……必要とされたいと思う事を自覚してしまったのだ。この言葉は遊や唯、雪那さんに向けた言葉ではなく…私自身の言葉。

一華さんの言う闇とは…私の前世の記憶の部分、思い出したくない吐き気がする忌々しく消し去りたい家族の記憶。

そして、物事の裏表…この世界のことを表すのだろう。裏は私達の前世、表はこの世界。

成り代わった人間にしか分からない心の闇。痛み、傷、悩み、悲しみ、想い、愛、懺悔、孤独、寂しさ……だから、求めてしまう。

それを、紛らわせてくれる人。それを癒してくれる人。それを考えてくれる人。それを想ってくれる人。








あぁ…どうしよう。

アメさんに会いたい……っ。







その時、一華さんが笑った。







一華「いつかはその関係も終わってしまうよきっと、……だから今は微温湯に浸りながら…確かめ合っても良いんじゃないかな?」






まだ、核の世界に追いつくには時間があるんだから。

どんな結末になろうとね。










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