雪が降っていた。さくっさくっ…踏むたびに雪は音を立て、足跡を残す。その先に見えた白地に青の椿が描かれた番傘を持つ、女性(ヒト)。

少しずつ開いていく距離に必死に手を伸ばした。声を出して、必死に叫んで…「行かないで…、待って…!」と…この一面の銀世界の中で彼女の名を呼ぶ。

真っ白な羽織と真っ黒な着物、その着物に住む青い蝶と白い桜…。雪に溶けるような色彩は音も無く影も無く、しんしん…と降る雪の中に消えていく。





待って……!

その言葉は、彼女に届いた。彼女は…ゆっくりと振り向いた。そして…薄く色づく唇を動かし………








「      」

と…言った。




















「…ん………」


ぱちっ…と目が覚めたヒカリは、数度瞬きを繰り返してから…そっと布団から起き上がり薄暗い部屋を見渡した。

それから、襖を開けて廊下に出れば…外は一面の銀世界が広がっていた。

昨日はほとんど積もっていなかったのに、一日でよくもまぁ…こんなに積もったものだと若干呆れながらも笑ってみた。

それにしても、あの夢に出てきた女性(ヒト)は………。








「  ソフィア  」





指先を唇にあて…彼女の名をそっと、呟いて見た。夢の中のヒト。

彼女は私の友人であり、外部で始めて私自身を見てくれたヒト。懐くのに時間は掛からなかった、好きになるのに…時間は必要なかった。

大切だと想い始めたのは、出逢った瞬間からだった。そのくらい彼女の存在は大きかった。それは、どうしてだろうか…?

兄さんやハヤト、トウキとは…違う感じがするけど。










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