俺は勢い良く起き上がった(ここ重要。

そう、勢い良く起き上がったのが間違いだった。






八畳程の部屋には、何百冊とも思われる古書が一般人の腰くらいまで積み上げられ、騒ごうものなら容赦無く崩れて、襲ってくるだろう。だから、本当なら俺も勢いよく立ち上がるべきではなかったのだ。


気付けば、今の現状は一華さんの怒りを買うどころか殺されかれない状況あった。

俺は近くの高く積み上げられた本に足を躓かせてしまい、そのまま転倒した。ただ、転倒しただけならまだ救いはあったさ。しかし、俺は……――――









ソフィアさんの真上。

つまり、押し倒し…転倒してしまった。





そして、最悪な状況は連鎖する。異常なまでに近い゛女性゛との距離。数ページ前にも何度は触れたと思うが俺は女性が怖い。超怖い。凄い怖い。近寄られた程度ならまだしも、この距離は…言ってしまえば、キスしても可笑しくない距離にあった。当然涙目どころか、発狂しそうな俺は喉を鋭利な刃物で切り裂かれたのではないかと言わんばかりの悲鳴を上げるために「ひぃっ…」と声を出した、その瞬間、








「煩いですよ」





かぷり、と噛み付くようにキスされた。

その一言を、最後に思考が停止する。いつの間にか後頭部に回された女性特有の細くて小さな手は俺の頭を押さえ込み、それ以上の行動を制限した。

ちゅっ、くちゅっ…と口内に響く粘着質な水音と少し冷たいソフィアさんの舌が俺の舌に触れる度に甘い痺れが舌先からじわじわ、と全身に広がっていくのを感じながら……身体から力が抜けていく。

唇を離される頃には、俺は完全に悲鳴を上げることも、抵抗することも出来ず…ピクピクと身体を痙攣させながら、放心ことしか出来なかった。










「口付けと言うのは、相手を黙らせる手段の一つでもあるのよ…」





ソフィアさんはちろっと、紅い舌を覗かせ…悪戯を成功させた子供のように笑った。
















(お茶持ってき、…え…?なに、どうしたんだ。この状況)
(ちょっとした、意地悪よ。)
(意地悪のレベルで人一人放心させてどうすんだ!……って、一華も何鋏構えて、襲うおうとしてんだよ…!!!!)

(…ぉ…ろす、……)

(三枚に?)
(いやいや、殺すの間違いだろ)

(よくもソフィアの唇をぉぉおおおおおおおおおっっっ!!!!!!!!)
(煩いですね。塞ぎますよ)
(喜んで!)
(猿轡で)
(何それ酷い!!)



⇒ あとがき。




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