「熱ぅ…っ」

そう、熱の籠る吐息と共に言葉を吐き捨てる午後2時を回った頃だろう。気温は昼になったというのに常に上がり続けていた。そんな炎天下の中、俺は一人部品の買い出しに出掛けていた。本当なら、リコちゃんが俺の手伝いに数人の部員を行かせると言っていたのだが、俺はその申し出をやんわりと断った。例え、一年であっても一生懸命に練習しているのだ。ならば、邪魔をしない為にも俺は一人で行くべきだと判断したのだが………失敗した。


買い出しのリストは事前に貰っていたので、見た限りではそう多くない。この時期は汗もかくし、その分の水分補給やら何やらでドリンクの粉を多目に買っておいても問題はないだろう。保存も利くしな。……筈だったのだか……皆考えることは同じらしい。近くのスポーツ用品店でリストに書いてあるものを揃える予定だったのだが…、どの店も品切れ状態が続いているそうだ。入荷は早くて三日後、遅くても一週間後らしい。




視界にゆらゆらと揺れる夏の陽炎が映る。汗は出尽くしたと言わんばかりに衣類を濡れていた。
















そして、気付けば………―――――。








「(あれ……?どうなったんだっけ……)」




太陽の光と熱で焼かれた地面との距離が妙に近い気がする。紫外線に晒され、身体中がヒリヒリ痛む。確か、電車を乗り継いで、店何件か回って………それから、やっとリストの物買い揃えられて…もう一回電車乗って戻って来て…………。


そこで、指先の感覚も思考すらまともに働かないことに気付いた。

意識が途切れる数秒前。倒れた店先で扉の開閉時に鳴るベルの音が聞こえた気がした。










そして、このベルの音がこの物語の開幕となることを俺はまだ知らない。










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