「つまりこれはジュウカソウの副作用という訳か」



屋敷の縁側に腰を掛け、黒い外套に渦巻きのオレンジ色の面をつけ、深々とフードを被っている男がそう、私に問いかけた。

肯定を示すように頷けば、男は頭をすっぽりと覆っていたフードを取り払い、自分の頭に生える獣耳に触れた。柔らかい毛並みに、酷く擽ったい感覚。痛覚も触覚も、全て感じる不思議。

一通り触り終えた男は、私の方へ視線を向けてた。普段なら絶対に存在しないそれは、酷く彼の好奇心を掻き立てるようだ。

ゆっくりと伸ばされた黒い手袋を嵌めた手は、私に生える尻尾を一つ掴んだ。

面の奥で細められる目は、興味深いと言わんばかりに私に触れ「触らないでください」と冷たく言えば、じとっとした目で見られる。

はぁ…と溜め息を吐いて、諦めれば男は嬉しそうに私との距離を縮め、抱き締めるように腰を引き寄せる。

すすっと…脇腹に手を這わせながら、尻尾の根元に触れた。指先でそこを締め付ける感覚。突然の感覚に、びくっ…と腰を跳ねさせれば男は耳元でくつくつと喉を鳴らしながら笑う。

とりあえず、男の頭に生えている耳を引っ張って見たがあまり効果はなかった。男はその反応に満足げに笑いながら、片手を腰に添えたまま私の頭に生える獣耳に手を伸ばす。



「それにしても、随分綺麗な毛並みをしているな。指通りも良い、触っていても飽きない。手元に置きたいものだ」

「……それは、口説いているととっても良いのかしら?」

「あぁ。しかし、強いて言うなら俺は今すぐに……










お前を食いたい。」




どさり…と背を倒させ、反転した視界は天井と共に押し倒した男の姿を映した。

面のおくから覗く赤い瞳が酷く、鮮明に光を燈しだす。



そうそう、まだ言ってはいなかったが……彼はどうやら”狼”になったらしい。

そして、私は今まさに…捕食されようとしていた。まぁ、彼の場合の食べるは別の意味の食べるにしか聞こえないのですが…。

悪足掻きとして、「まるで、盛りのついた犬のようね」そう毒を吐けば…ずらされた面から覗く唇が私の口を塞いだ。






「俺はお前に対していつでも発情しているさ。それに、”女”は”狼”に食べられるものだろ?」





どうやら、あの薬草は獣耳や尻尾が生えるだけではなく、性格が大分変るようです。




























「つまり、これはチャクラの塊ってことですか?」

「ジュウカソウはチャクラ増幅の為に、ある一族が作った薬草で…その一族が滅んだ際にその栽培方法も無くなってしまったが最近木の葉ではその群生に成功した。

しかし、ジュウカソウは副作用が強く…使用者への負担が大き過ぎた。報告書を見たが、主に意識障害と身体変化が見られたよ。

身体変化は今現在のこれで、意識障害は変化した動物と同じ行動パターンになるらしい。







そのうちハヤトとファイの語尾に”にゃん”でもつくかもしれないな」

「冗談抜きでお願いします。言わないでください。

てか、アンタも性格変わってんじゃないのか!?!?」

「お前猫っぽいから鳴いてみろ」

「マシロさんっっっ!!?!?!!」










「まぁ…余ったチャクラを発散するために、身体の何処かを増幅させる。それが動物の身体の一部になる。この現象の正体だ」

「…でも、師匠はそんな草を口にすることはないと思うんだが……」

「その事だが、木の葉にある茶屋で…誤ってその草を使い、菓子を客に出したそうだ。元々その茶屋は兵糧丸の改良と副作用の軽減の為に医療班と協力してたらしい」





あ…そう言えば、数日前に師匠がソフィアに用がありこちらに来ていたのを思い出した。そして、茶屋で話をしていたのを思い出す。

その時食べていたのが、甘さ控えめの三色団子。一番上に刺さる紅い団子、次に刺さる白い団子、そして一番下に刺さった団子は緑。ヨモギを練りこんだ団子。

つまり、その緑色の団子にはヨモギではなくジュウカソウを練り込んでいたわけか。





「じゃ、ソフィアはどうなったんだ?」

「…ソフィア様は、」














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