朝の日が淡く差し込む部屋の中、俺は頭に刺すような痛みを感じながら目が覚めた。

別に悩みとかそんなんではなく、痛い。頭痛がし、吐き気がする。腰も痛いし……もしかして、女特有のあれかと思ったが違うし…。ならこの痛みはなんだ?

そう思いながら、痛む腰を擦ろうと手を腰に伸ばした時…俺は自分自身の手の感覚を疑った。ふわっとしてて、さらさらとした感触。猫の尻尾のような…。

でも、俺は猫を飼った覚えはない。捨てられた犬や猫は、放って置けなくて…良く拾ってくることはあるが、それでも…昨日一昨日と俺は動物に触れた覚えは本当になかった。

もう一度それに手を伸ばし、それの繋がる先を指で辿ると…俺は痛む頭を手で押さえれば更に痛ませる。

尻尾の根元は俺の腰、尾てい骨に繋がり…頭にやった手はふわふわな耳のようなモノに触れた。俺は現実を直視するために、布団から飛び出し洗面台に走った。

そして、早朝の時間帯であるにも関わらず大声で叫ぶ。







「なんだこれぇぇぇえええええええっっっ?!?!?!?」




俺の声で、外でいちゃついていた鳥達がいっせいにばさばさっ!と飛び立った。そして、洗面所で両手両膝を地面に着きショックのあまり放心する。

うちはハヤト16歳にて、生まれて初めて猫耳と尻尾が生えるという怪奇現象を身を持って知る事になるとは誰が想像できただろう?

そして、その頃…ハヤトの家から少し離れたはたけ家でも同じ現象が起こっており、怪奇現象を受けたマシロ以上に兄のカカシが騒ぎ出すのはもう少し先の話。
















「じゃ、師匠の仕業じゃないんですね!?」と聞けば、師匠は面倒くさそうに返事を返した。

あの後俺は暫く放心していたが、意識を現実に戻し師匠宅に掛かる電話に一直線に走り出した。

受話器をとり、さっさと出やがれ馬鹿師匠と念じながら受話器を耳に押し当てて向こうの声が聞こえるのを待っていると…。

三回ほどコール音の後に、寝起きでびっくりするぐらい低い声の師匠が「…もしもしぃ…?」と寝惚けながら応答した。俺はそんな師匠に構わず、大声を張り上げていた。

いや…もう、こんな姿で任務も外も出られないじゃないか!!とりあえず、有りっ丈の不満を受話器越しにぶつける。

それでも、師匠は寝惚けていて俺の話なんて一切聞いていなかったし…。もう半分寝てた。今も俺の話を右から左へ流して、頬杖を着きうとうと…としてるし!




「そうだっつてんだろ。朝早くに呼び出したかと思えば、耳と尻尾が生えたぐらいでがたがた…と。向こう何時だと思ってんだよ……」

「自分にも生えてる事あんた理解してるのか?」

「………………マジ??」

「自分の頭に手やってみろよ…」




寝惚けた師匠は半信半疑に自分の頭に手をやり、それに触れる。

そして、触りなさない感覚に寝惚けていた意識は覚醒していき…朝の俺と同様の反応をした。







「なんじゃこりゃぁぁぁぁあああああああっっっっ!!!!!!!」

「気付くの遅っっ!!!」









本当に師匠は今回のことには無関係らしい。

てか、この状態の師匠を良く外に出せましたね…燿次郎さん。きっと今頃、頭抱えて…武装準備してるんだろうな。

しかし、そんな心配は本人には全くと言っていいほど通じてはおらず師匠は暢気に真っ黒な猫耳を触り続けてる。時折ぴょこぴょこ…と跳ねる耳が可愛いとか思ったのは秘密だ。





「なんか、凄ぇ……ちゃんと感覚まであるし…」

「師匠は何か心当たりとかないんですか…?」

「心当たりねぇ……」





んー。と、うねりながら考える師匠…その間、腰から生えた黒い尻尾がぱったんぱったんと地面を叩き動いている。なんだろう、凄く追いかけたい。じゃれたい。

ヤバイ…猫の耳と尻尾が生えた所為で、思考まで猫化しているのか?本気で止めてくれよ、頼むから。



てか、ソフィアやマシロさんはどうしているのだろうか。

いや…あの二人なら耳が生えようと尻尾が生えようときっと通常運行だ。そして、周囲もそんな二人に全く突っ込まないで居るから恐ろしい。ツッコミ不在で、無法地帯と化している。

溜め息を吐きながら師匠の方をちらり…と盗み見れば、寝ていた。考える事に飽きたらしい。てか、何故か俺も酷く眠たく…頭の中がぼんやりしてきた。

そう言えば此処最近まともに寝ていないような……。










「やっぱり、お前らもなってたか」




うとうと…と微睡む意識の中、聞き慣れた憧れの人の声が聞こえた。

そっと、声のした方に目を向ければ…俺はゆっくりと大きく目を見開く。

















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