一華「数日ぶりだね…ミルキちゃん」

ミルキ「(誰だ、暫く会うこともないなんて言った奴……!!!)」



明らかに自分だ。そして、私は問いたい。

何でここにいると!!?

いや、仕事は終わったんでしょ?なんでいるの??忘れ物?忘れ物なの??なんで普通に喫茶店でお茶してるわけ?

と…内心本気でパニックになりながらも…「そうですね」と返した。ねぇ…顔引き攣ってない?大丈夫??






あの日以来、一華さんに対する苦手意識が生まれた。いや、初対面で…しかも目を合わせただけで全身硬直って…ある意味凄くね?

だから、今も顔を上に上げられず俯いている。その姿を見た一華さんはくすっ…と笑った。




一華「別に大丈夫だよ。一度見てしまえば耐性が付くから」

ミルキ「…………」

一華「信用してないね。まぁ…良いけど」

ミルキ「何故…この街に…?」

一華「ん…?」



こてん…と首を傾げ自分を見る一華さん。

まずった…。これでは、早く出て行けと言っているものだ…。

失礼だ。…だけど、何故だろうか……美影一華という人物はとても危険人物に思える。

今自分にとって…とても、…恐ろしく思える人物。それは、何故だ…。美影一華…という人物は一体………







一華「同じイレギュラーだからだよ」




一華さんはなんの躊躇いもなく言い放った。それは何を意味するのか、理解するのに時間が掛かる。

この人は今、なんて言った?



ミルキ「それは、どういう」

一華「そのままの意味だよ。君は実際にはミルキ・ゾルティックと言う人間は男なんだろ?成り代わったミルキちゃん」

ミルキ「…!!なんで」

一華「所謂専門家だよ。そう言った子達の……時々いるんだよ。成り代わって生まれてくる子達が」

ミルキ「…どうして、それを私に……?」

一華「僕の生業は占いでね。ほんの少しだけ先の未来を教えてあげることなんだ」







つまりは、君が何をしようと…結局はもう君人生だって事。

それに君らにとって原作と呼ばれる”核”の世界は君が知るように寸分の狂いも無く進むよ。なんの問題もなく、なんのイレギュラーも起こらず、現れず…物語は進むよ。

だから、異世界で起こったことなんて”核”となる世界にはなんの影響もないんだよ。





まぁ…そこらへんは君自身理解してるんでしょ?

だから、僕は他の子達みたいに不必要な助言はしないよ。だって、意味がないもの。

理解しているものを再び理解してさせるのは苦痛以外の何者でもないからね。










そういって、一華さんはカップに入ったカフェオレをこくっ…と飲む。ちなみに自分の前にはホットココアが置かれているが…手を付ける事が出来ない。

飲んでしまえば夕食が入らなくなってしまうし、下手をすれば吐いてしまうかもしれないから。彼の好意は嬉しいが、それだけは出来れば避けたい。だから、我慢。

すると、ぽん…と頭に手を乗せられ遠慮もなく撫でられた。がしがしっ…音がつきそうなくらい乱暴で激しくて…、だけども…それでも…優しく感じられた。

俯けていた顔を上げれば、一華さんの真っ直ぐな目に悲しそうな色があった。








一華「成り代わりって言うのは一番厄介な物だからね……特にミルキちゃんは運の悪いほうだ……。

それも厄介中の厄介…初詣でおみくじを引いて毎年大凶出すくらいに運が悪いみたい」

ミルキ「いや、でも…それはそれはある意味凄いよね。例えが嫌だけど」

一華「まぁ…そうだね。運気なんて毎年違うわけだし…例えられた方には凄く失礼だしね」

ミルキ「(…この人は天然なのか?)」





本人を目の前にして、失礼だと自覚している例えを口にするとは……肝が据わっているのか無自覚なのか。多分後者であろう。絶対本人気付いてないよね!

少しだけ抜けている所に…意外と人間味のある人だと思った。そして、いつの間にか私は笑っていた。





一華「うん、そっちの方が可愛いよミルキちゃんは」

ミルキ「アメさん…並みに口説きますね」

一華「アメと比べられるのは嫌だな。」

ミルキ「それは、失礼しました」

一華「いえいえ。ミルキちゃん、もしも何か困ったことが有れば…此処に連絡して」



そう言って一華さんは一枚の綺麗に畳まれた紙を手渡す。開いて見れば、電話番号とアドレス、更にその下に漢字で遊、唯と書かれていた。

どうして…これを、?と目を向ければ「二人はミルキちゃんと友達なんでしょ?だからね。ちなみに、仕事の連絡から遊びのお誘いまで受け付けてるらしいから」にこっ。

一華さんはそれだけ言って席を立つ、そして会計を済まし…店を出て行こうとした時に彼は言い忘れていた事を言うように「今度は幸せになれると良いね」と。

ばいばい…、手を振って彼はこの店を出て行った。









ミルキ「くそっ…ただのイケメンが………」



そう吐き捨てて、顔を覆う。後日談、店に戻ったとき顔が真っ赤だったそうだ。







(一華さんのような人が、兄貴だったら良かったのに)

(なんて、お馬鹿なことを考えてしまった)

(てか…本当にただのイケメンだった)



title:確かに恋だった


⇒ あとがき



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