3/4 ─── 聖夜での営業が終わる。 植之助と咲良は体を引きずるように家路を歩いていた。 『あーん…もう疲れちゃったよ俺様 花屋なんてやめてやるわっ! …って言い続けてもう40年以上経ったなー』 『…毎年言ってるけど結局やめないよね』 『もうイエス様ったらなんであんなにエロく、じゃなくって偉くなっちゃったのさー イエスが偉くなかったらクリスマスなんてなかったのに』 『んな2000年以上前の事にケチ付けても』 『大体さー、俺様キリスト教徒じゃありませーん神道でーす』 『世間じゃ通用しないよ』 『生まれた日が12月25日ってのは実は正確じゃないんだろー? んもう恨むよ世間…ついでに恋人と過ごす日って日本の風潮』 『最後おじさんの個人的な恨みだろ …でも私も正直恨み事の一つや二つ言いたくなる。 練習さ、私があまりに疲れてたから守に禁止された。』 『あの守君が?…なんか、すまないな。』 『良いよ、おじさんのせいにはしたくない。』 二人でぼやきながら歩き、家に着く。 さっさと家に入りたいと思う二人に、何故家の電気がついているのかという思考は回らなかった。 咲良は引き戸を掴む。 鍵をかけている筈だったのに、何故か、開いた。 そして。 「咲良ちゃん、植之助さんお帰りなさーい♪ハァハァ」 玄関には何故か、基山ヒロトがいた。 裸エプロンで。 ガラガラガラッ! 咲良は勢いよく引き戸を閉める。 『……』 『………』 『…………』 『…………おじさん』 『…うん、なに』 『入る家、間違ったかな。』 『…でもさ、ちゃんと表札には春日野ってあったじゃない…』 ガラガラガラッ 「咲良ちゃんも植之助さんも酷いや! 俺折角玄関で待ってたのにさ!!」 痺れを切らしたらしいヒロト自らが引き戸を開けた。 『え?そのカッコで?』 「そうですよ!」 『寒くない?』 『おじさん!ツッコミ所はそこ!?』 「寒いです!でも咲良ちゃんの為ならハァハァ」 『ヒィィィィ』 「まあ兎も角入って入って!」 ヒロトが手を引こうとしてきたが、それは丁重に断り促されるまま家に入る。 正直嫌な予感しかしない騒がしい音が聞こえる。『…おじさん、嫌な予感しかしない。』 『奇遇だね、俺様も』 「皆ー!二人が帰って来たよー!!」 「咲良っ!!やっと帰ってきたか!待ちくたびれたぞ!」 「おじさん、お邪魔してます」 「ったく、やっと来たか」 「お帰りなさいでヤンスー!」 「お邪魔してるッス!」 「ったくおっせーなオッサン!」 「咲良ー!私が来たぞー!!」 「よぉ咲良ちゃん」 「咲良、お前の家にはドリームキャストやらセガサターンやらXboxやら負けハードしかないのか。」 なんでこんな人数いるし。 |