※「私を探して下さい」の続編 今までと違う関係になると、今までとは違う一面が分かるというのは本当の事らしい。 この男…ニース・ドルフィンと所謂恋人というものになって奴の新たな事が分かった。 「…また、あっちの男見てただろ」 『うおい、そのぐらいでか!?』 奴は意外と嫉妬深かった。 今ふと視線を動かしたらその人が写っただけだ、決してやましい事はない! 男が彼女とのデート中に平気で他の女チラ見するよりは遥かにマシなレベルだっ! 「全く…、男が彼女とデート中に他の男チラ見して彼女を怒らせるって事はよくあるけど、彼女が男をチラ見して彼氏をヤキモキさせるなんて聞いた事ないよ」 『まるで私が男好きであるかのような言い草だな貴様! 自分で言うのも難だが、私は好きな男を既に他の女に取られてる様な人間だぞ!?』 「それは関係ないな、寄ってくるものは寄ってくるんだから」 『私はいつも通りだ、お前が気にし過ぎだろ。お前らしくもない』 「そのいつも通りが困るんだ」 『困るって…』冒頭であんな事書いたが、恋人という関係になっても私自体特に何かを変える気はなかったし、変わった気もしなかった。 世間一般では可愛げがないと言われると思う。 まあ私はそれで良いと思った。 しかしニースはそうでもなかったらしい。 正直、変わったのはニースだけなのかも知れない。 こいつは相当な女好きだし、私もそれは覚悟で付き合う事にした。 まあそこまで束縛厳しくないだろうと思ってたんだが、そうでもなかった。 …いや、寧ろ男は自分が浮気しても本命が浮気するのは許さないらしいな。なんとも勝手な まあニースとしては、自分の彼女である自覚を持って欲しいらしい。…自覚って何だ 付き合ってる時点で自覚とは言わんのか!? 『なんだ貴様は、自分の彼女が誰かに取られるかもなんて有りもしない妄想して怯えてんのか? お前ぐらいの女誑し野郎はなぁ、ドーンと構えてりゃ良いんだよドーンと!その中学生らしからぬ大胸筋は飾りか、えぇ?』 「…。変わってないな…」 『何が。』 「誰かに取られるかもしれない云々の前にその態度。まるで付き合う前と変わらない」 『残念ながらまるでではない、全く変えてるつもり等ない』 何だ、もう少ししおらしくしろってか。無理だ。 これが私の性分だ。 『何より、お前は私に何を求めている』 「簡単さ、君の全て何もかも」 間も置かず迷いない即答。 『…お前は既に手に入れているじゃないか』 「いいや?」 『…じゃあ何が足りない』 「君の心」 『…軽口言える元気はあるんだな』 「軽口なんかじゃない。 …さっきから俺の目見てないよね?」 顎を掴まれて無理矢理ニースの方へ向けられる。デジャヴ 奴の瞳の色は羨ましい程綺麗なエメラルドグリーンだが、それに反して熱さを感じる瞳。 言うなれば…熱くて鋭い瞳。 (ああ、あの時と同じだ) ニースが失恋した私を口説きにかかった時も、ニースはこの瞳だった。 『あ…私はな…』 脳内は冷静なように回っていたが、現実に出した態度は戸惑っている姿そのものだろう。 煩くなる左胸。 「…咲良の弱点、見つけた。」 『…何だそれ』 「俺と見つめ合う事。…あの時と言い。」 『…それ自分で言ってて悲しくならない?』 可哀想な事自分で言うなよ。wwwを付けて言いたい 「あの時は君の気持ちが分かりやすかったけれど、でもそろそろ困るな…俺は君を見つめていたいのに 簡単に言えば、君に俺を見て欲しい…いつでも」 『…お前は色々思い詰め過ぎだ、手に入れたならあれもこれも欲しくなる心理だ、抑えろ』 「君に対してだけは絶対に貪欲で行こうと思ったんだ。抑えるつもりはないよ っていうか『そんな事ない』ってくらいは返して欲しかったな」 私は奴の手から逃げようとしたが、更に腕を掴まれた。 「…お仕置き、目を開けたままキスしよっか」 『あっお、いっ!?』 ニースの指で両目が閉じられないよう見開かれ、本当に見つめ合ったまま唇を奪われた。なかなかない光景だろう 熱くて鋭い眼差し。 こんなのを毎日見つめろなんて拷問だ…。 手は自由になった。でも抵抗が出来ない。 頭が惚けたようになってきた…。 「っはぁ…」 『あ…』 長く感じられる程の時間の末、やっと解放された。 銀色の糸が引く。いつの間にか舌を入れられていたとは迂闊だった。 力が入らないので、取りあえず受け身を取るように後ろへへたり込んだ。 「んー…咲良ー」 『…ニース』 そこへニースが、さっきの鬼気迫る狂おしさから一転、今度は幼子のように纏わりついてくる。 「俺ばっか好きみたい…そんなの嫌だな」 上目遣いやめろ。 全く、ねだりたがり屋とは子供だな。…いや、こいつも一応中学生だし子供だった。 『貴様はお子ちゃまだな』 ニースの頭を撫でながら言ってやった。…この際体格とかもうツッコミ入れない。 「子供でも良いさ、いっその事。…俺ともっと向き合ってよ」 ああ、でもやっと分かった。 確かに私はこいつとは向き合えてなかった。 まだ失恋からの現実が受け入れられてなかったんだ。 それであの時告白されて流されるまま…か。 だから付き合えた気がしてなかった。 …でも、あの時こいつに告白された時の感情とか思いとか、決して流されるままなだけのその場限りな物なんかじゃない。 まだ向き合えてなかっただけで、ちゃんとそこにはまだ存在していた。 『分かったよ、…今度からは、なるべくあんたの事見つめててあげる』 「あはは、じゃあ早速仲直りのキスを」 『しかーし、お子ちゃまなあんたにはお預けだ』 「ちょ、酷いな!」 関係が変わってからの、私の一面もまた分かった。 こいつの熱くて鋭い瞳と見つめ合う事が苦手な事。 でもいずれは克服して見せよう。 …曲がりなりにも、私だってこいつを愛しているから。 (あなたとちゃんと見つめ合う為に) これまた『Amore!』様に提出。 続編設定に応じて頂いた事誠に感謝。 ぶっちゃけ前作の方も今回のテーマ(熱くて鋭いあなたの瞳)っぽい感じがorz とりあえず構って欲しい犬みたいな海豚 2012/12/31(MON) |